第134号 参議院選挙を振り返って ~これからの政界展望~



◆ 参議院選挙の結果を受けて

 安倍政権発足後、初の大型選挙となる第21回参議院選挙が17日間にわたる戦いを終え、7月29日、国民の皆様の審判が下されました。
 結果は誠に残念ですが、私たち与党にとって非常に厳しい事態となりました。自民党は改選64議席から37へと議席数を大きく減らし、公明党も3議席を減
らし9議席にとどまり、与党は非改選を含め参議院で105議席と過半数を大きく割ることとなりました。勝敗の鍵を握る29ある1人区で自民党が6勝23敗
と負け越したのも大きな痛手です。年金記録漏れ問題や閣僚の不祥事が逆風となり、民主党が一気に支持を伸ばすことになりました。
 
埼玉県選挙区におきましては、川口市で古川としはるさんの得票が全候補者中トップとなりました。選挙期間中には、安倍晋三総理大臣や塩崎恭久官房長官、額
賀福志郎元防衛庁長官等の応援をいただき、私も同志である川口・鳩ヶ谷選出の県議・市議、そして党員・後援会員の皆様と共に一生懸命活動させていただきました。ご支援いただいた有権者の方々に心よりお礼申し上げます。
 一方、定数3の埼玉選挙区において、公明党現職の高野博師さんが惜敗し与野党数が逆転してしまったのは誠に残念です。
 比例区選挙では、2002年に私が外務大臣政務官を努めていたとき外務大臣だった川口順子さんを始め、私やこの街に縁のある橋本聖子さん、有村治子さ
ん、中山恭子さんらが相次いで我が街を訪れ、それぞれが立派に当選されました。皆様のご支援に重ねて感謝申し上げます。


◆ 国民の皆様の民意をどう受け止めるか

 それにしてもこの度の選挙結果は私たち自民党にとってまさに冷や水を浴びせられたような惨憺たる大敗北となりました。年金不信や政治とカネの問題、更に景気回復が遅れている地方の格差問題や、農業の将来不安などの問題が総合的に作用した結果だと思います。
 選挙後の7月31日、自民党本部において党の最高意思決定機関である総務会があり、現在メンバーの一員である私も出席して会合が開かれました。衆参31
人で構成される総務会の大半は、閣僚経験者や党の重鎮の方々です。中川秀直幹事長や青木幹雄参院会長から辞任の申し出とともに、選挙の総括報告がなされま
したが、出席者からは極めて厳しい意見が続出しました。
主な声は、
○一人区、中小企業、農業、地方の声が敗因だ。
○参院側よりは政府の運営に問題があった。安倍総理は続投の上挙党一致と言っているが、その前に敗因分析が重要だ。地域社会が壊れている=自民党基盤の底割れだ。
○自ら政権選択選挙と言ったのだから総理は責任をとるべきだ。
○赤城農相は辞めるべきだ。
○政治資金問題をまず明確にすべきだ。
 等々、一時間以上に及ぶ会議となったのです。
 翌8月1日には赤城農相は辞任、政治資金法も1円以上の領収書の添付の義務づけなど再改正の流れができました。自民党はまず現状を把握し、一刻も早く体制の建て直しを図らなければなりません。


◆ 「衆参ねじれ」現象下において

 こうした中で私が憂慮するのは、衆参ねじれ現象下における政治の不安定化です。この不安定な政治状況下においても、重要な政治政策課題は山積しています。とりわけ国益や国民生活の安定に関わる政策は粛々と進めていかなければなりません。
 しかしながら、小沢党首率いる民主党は、政権交代を最大の目的に置いており、政府の提出する重要法案には反対する意向を示しています。
 例えば、自衛隊がインド洋で給油活動を行うテロ特措法は11月1日に法の期限が切れますが、小沢党首は延長に反対することを明言しています。国の根幹を
なす重要法案が衆院で可決されたものを参院で否決し、また衆院で2/3以上の多数で再可決するような事態をたびたび招くならば、わが国は国際社会からの信
頼を失うとともに、経済市場は混乱し、やっと回復基調が本格化しようとする景気が再び腰折れする可能性が出てきてしまいます。
 政治の目的が政権獲得という権力ゲームとなり、与野党が立場だけで反目しあえば、国の将来に大きな暗雲が立ち込めることになります。衆参ねじれ現象下の
国会は、各党の政策競争の場としなければなりません。私も自民党の一員として、今一度この国に必要な改革と、生活に求められているものは何かを考え直して
みたいと思っています。そして小泉構造改革の光と影、市場原理主義と小さな政府体制によるひずみ、都市と地方の格差問題や社会保障体制の見直しが必要と考
えております。
 衆議院と参議院で与党と野党が議論しながらどちらが国民の信頼を得る法案を出せるか、という風に競い合っていけば、日本の政治はより成熟し活性化するのではないでしょうか。
 当面の政局の課題は、9月に予想される臨時国会までに自民党が国民に期待される体制構築と政策の方向性を打ち出せるかにかかっております。
 まずは政治とカネの問題に思い切って取り組み、内閣改造と党役員人事によって国民の信頼を得られる体制をつくれるかが改革続行の試金石となります。今回
の選挙結果は自民党にとって大打撃となりましたが、ピンチこそチャンスでもあります。私も街の声に耳を傾けながら、必死に活動して参ります。

新 藤 義 孝

第133号 「30秒で世界を変えちゃう新聞!?」 (地球温暖化対策)あなたも読んでみませんか



 
今回の週刊新藤は地球温暖化対策について書かせていただきます。6月1日からは国会もクールビズとなり、各議員もあふれる個性を発揮し、国会内の服装セン
スは全く調和のとれない状態となっております。しかし、クールビズも3年目に入り、すっかり市民権を得たように思います。身近なところから地球温暖化防止
のための実践行動を起こすことが何よりも大切なことであり、地球規模で取り組むべき温室効果ガスの削減には、私たち一人一人が更に関心を持つべきです。


◆ チーム GOGO! 2007

 今月1日クールビズ初日に、学生が議員会館の私の部屋を訪れて参りました。全く面識はありませんでしたが、仲間の代議士の紹介でぜひ話を聞いて欲しいと
のことでした。彼らは環境問題に関心を持つ人々で組織する「TEAM(チーム)GOGO!」が募集したボランティアで、環境問題を訴える号外新聞をつく
り、全国で3,000万部、埼玉で155万部配布する目標を立てており、ぜひ協力して欲しいと依頼されました。
 号外の中身はすぐにできる温暖化対策を色々と紹介するもので、配布の目標は立てたが、155万部配ることは簡単ではなく苦労しているとの話でした。若い
人たちが汗をかき一生懸命行動している姿勢を見るのは、本当に嬉しく頼もしいものです。私は私の仲間に頼んで配布の協力をしてもよいと学生たちに返事を
し、今回はこの週刊新藤と一緒に号外を配らせていただきました。このHPをご覧の皆様にはぜひ彼らのウェブサイト(http://www.teamgogo.net/)も合わせてご覧下さいますようお願いします。


◆ 京都議定書の削減目標 -6%

 地球温暖化の危機に対応し、少しでも地球へのダメージを回避するためには世界中の全ての国が協力し合って努力していくことが必要です。そのための第一歩が、2005年に発効された「京都議定書」です。この国際約束の下、日本は2008年から2012年までの期間における二酸化炭素を始めとする温室効果ガスを、1990年度比で6%削減する責任を負っています。しかしながら、2005年度の日本の温室効果ガス排出量は+7.8%となっており、-6%の目標達成は容易でない状況にあります。
 企業努力により温室効果ガス削減を重ねてきた産業界では斬減傾向にあるものの、オフィス(1990年度比 +44.6%)や一般家庭(+36.7%)等からの増加が著しく、こうした民生分野の排出をいかにして抑えていくかが大きな課題となっています。


            【温暖化対策関連資料】(PDF)


◆ CO2削減のカギは家庭から

 家庭のCO2排出量の増加はエネルギー消費の増加と比例していますが、エネルギー消費の増加は、世帯数の増加、家電等の保有台数の増加、ライフスタイルの変化などが大きな要因です。
 家庭におけるエネルギー消費を見ると、家電、冷暖房、給湯の3つの分野がそれぞれ3割位ずつ占めています。
 まず家電
ついて見ると、省エネ法に基づくトップランナー制度により家電機器の省エネルギー基準は大きく向上しています。トップランナー制度とは、家電の省エネ性能
や自動車の燃費基準について、現在商品化されている製品のうち最も優れている機器の性能以上にすることを義務づけるもので、現在、自動車、エアコン、テレ
ビ、ビデオ、蛍光灯器具、冷蔵庫、パソコンなど21品目が対象とされています。この制度により新しく販売されている家電製品の省エネ性能は数年前に比べて
格段に高まっています。
 次に冷暖房についてですが、前述のトップランナー制度によるエアコンなどの機器の性能の向上に加えて、天井や壁、窓やドアなどの開口部の断熱を高めることにより、エネルギー消費を低減させることができます。例えば、単板ガラス・アルミサッシ等から複層ガラス樹脂サッシ等へ窓の断熱改修を日本の全住宅(4,700万戸)で行えば、3,500万トンのCO2の削減効果が見込め、これは京都議定書の6%削減義務の半分を占めるといった試算もあります。また、「次世代省エネ基準」という住宅の断熱性能などを定めた基準があるのですが、この基準を満たす新築の住宅自体3割から4割程度であり、この適合率を高めることが重要です。
 給湯については、エアコンのヒートポンプの原理を活用したエコキュート、従来利用されなかった廃熱を活用したエコジョーズなど、省エネ効果の高い高効率な給湯器を普及促進するため、国による補助制度が実施されています。
 したがって、消費者の皆様には、物を大切に使うのはもちろん結構なことではありますが、例えば古いエアコンや洗濯機などの家電製品は大量の電気を使うため、省エネ性能の優れた新製品に買い換えた方が結局はお得であり、環境にも優しいことになるのです。


◆ 省エネ促進と温暖化対策のために

 地球温暖化対策というと、省エネ=使わない=我慢する、というイメージがありますが、実際は効率の良いものに取り替えるという方が正しいのです。皆さん
もこの際お宅にある古くなった電化製品について、改めて環境面からチェックしていただければと思います。これはわが国の消費にも役立ちますが、家計への負
担がついてまわります。いくら温暖化のためとはいえ、家電製品や車を買い換えて下さいといっても、消費者への負担軽減がなければ実効性は上がりません。そ
こで私は、省エネ促進、地球温暖化対策のために税の控除制度の拡充を政府に提案しようと考えています。省エネ家電を購入する、あるいは省エネ住宅対策を実
施した場合には所得税や法人税を軽減できるようにしてはどうでしょうか。例えば、私が使っているハイブリッドカーは中古で購入したので、新車購入時のよう
な税の軽減はありません。中古自動車にもエコカー減税を認めれば更に普及が進むと思います。
 今後、環境・省エネ住宅を推進する議員連盟での活動や、秋の自民党税制調査会で具体的提案が行えるよう研究してみたいと思っています。
 温暖化対策は人類最大のテーマです。私たち一人ひとりができることから省エネの努力を積み重ねて、次の世代の子どもたちが安全で安心して暮らしていける環境づくりに取り組んでいこうではありませんか。

新 藤 義 孝

7月は参議院選挙期間となるため、「週刊新藤」の発行をお休みさせていただきます。どうぞご了承下さい。

第132号 年金不信の解消に向けて    ~皆様にお詫びします~



 
まず始めに皆様に深くお詫び申し上げます。この度の年金不信問題の責任は社会保険庁と政府にあり、更に立法府である我々全ての国会議員にその責任がありま
す。私たちの老後の安心をつくる大切な年金制度の信頼確立については、決して政局や政争の道具とせずに、与・野党が建設的な議論・審議を行うべきです。一
刻も早く皆様の不安や不信を取り払うべく、具体的な作業を実行していかなければならないと思います。
 年金問題対策については、自民党のホームページ(http://www.jimin.jp)で資料が公開されておりますが、この週刊新藤でも私たち政府・与党が進めようとしている対策のポイントをご説明させていただきます。


① 未確認記録の名寄せを急ぎます
 平成9年より年金記録は1人1口とすることに法改正がなされ、就職や転職、結婚による改姓などにより、複数保有していた年金記録の統合が行われました。
1億人の人口の国で3億口の年金記録があったため、1人に1つの基礎年金番号を付する作業を行ってきましたが、約5,000万口の未確認年金記録が残って
しまっており、この度更に1,430万口の未電子化記録が明らかになりました。

○皆様の年金不安を払拭するためにも、来年5月までに電子記録の名寄せを完了させ、その上で記録もれの可能性のある方には速やかに通知します。また、未電子化記録の方でも、記録の不備が確定すれば、改めて本人や遺族が不足分の年金を受け取れるようにします。


② 年金の”未払い”が判明した場合は、時効により5年分しか受け取れなかったものを全額受給できるようにします
○領収書等の証拠がなくても、銀行通帳の出金記録、元雇用主の証言などを根拠として第三者委員会で判断してもらうなど、積極的に支給できる仕組みをつくります。


③ 年金記録相談体制を強化します
 国民の立場に立って、利用しやすい相談体制を敷くとともに、相談に対しては、丁寧に説明し、迅速に処理するよう、窓口に徹底させます。
○電話相談:土・日を含め24時間電話相談を実施します。
・0570-05-1165 (イイロウゴ)
・0120-65-7830 (ロウゴナヤミゼロ)
を導入し相談窓口を拡充し誠心誠意対応します。
○来訪相談:平日は毎日午後7時まで受け付けます。(これまでは午後5時15分まで)
○出張相談:市町村での出張相談に加え、大都市の繁華街での臨時窓口でも実施。可及的速やかに開始し、順次拡大します。
○インターネット照会:体制を強化し、処理時間を改善します。


④ 年金記録の統合に要する費用
 この問題による追加的経費については年金保険料を使わずに厚労省の予備費など国庫財源で対応します。


 以上に対応するために全5条からなる「厚生年金保険と国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律案」(年金特例法案)を私たちは国会に提出したので
す。野党はたった1日の審議で採決することは数の横暴だ、もっと慎重審議すべきだといって衆議院本会議での採決に際し、厚生労働大臣等の不信任決議案等を
提出しました。
 この時私にはとても不自然に思える出来事がありました。午後8時20分頃から再開された衆議院本会議で、民主党の行った柳沢厚労大臣の不信任決議案の趣
旨説明演説は、何と1時間47分行われました。通常10分程で終わるものが異例の長さとなったのですが、本会議が再開される前に私たちに伝わってきた情報
では、夜の10時のニュース番組が始まるまで演説を行い、国民にアピールするため長い演説を準備しているという話でした。
 国会法は審議や討論の時間制限を行っていますが、閣僚不信任決議案などの趣旨説明演説については慣例で時間制限を設けていないという制度の盲点を突いた戦略です。
 本来10時15分で終了する予定の本会議は、かくして深夜1時30分まで及んだのです。発言者は強い想いがあってのことだと思いますが、政策の中身ではなく国民やマスコミ向けのパフォーマンスが画策されているとしたら全く悲しいことです。
 繰り返しますが、私たち国会議員は与党も野党もなく、年金不信の解消策を一刻も早く実行しなくてはならないのです。


◆ 皆様の未来の安心を保証する為に
 この事態を招いた最大の原因は2つあると私は考えています。1つは「年金法の申請主義」の問題です。記録の訂正や受給申請は本人が申請しなければ行われ
ない仕組みになっており、このことは「週刊新藤」第53号(気がつかないないと損する「請求もれ年金」2005.4.18)で私も指摘しております。今
回、与党の提出した年金特例法でようやっと政府の責務を明記し、この問題は解消されることになります。
 もう1つは社会保険庁と社保庁労働組合(自治労国費評議会)との歪んだ関係ではないでしょうか。社保庁は2005年まで労働組合との間で「確認事項」や「覚書」という102件もの文書を取り交わしています。
・コンピューター導入による定員削減は行わない
・1時間につき15分の休憩時間を設ける
・1日1人あたりのパソコン操作は180分以内、等々です。
 そして年金財源で職員用の住居建設や公用車の購入、巨額の赤字施設となったグリーンピア建設など、年金保険料の無駄遣いやずさんな運営実態は皆様もご承知のことと存じます。
 この親方日の丸的体質を断ち切るために私たちが提出したのが社会保険庁改革法案です。社保庁を廃止の上、6分割し非公務員型の年金機構などを設立し、職
員は民間人としてやる気のある人だけを採用します。また年金の徴収などはできるだけ民間企業に委嘱しコスト削減を図ります。そして年金保険料は他に流用し
ないこととし、年金支給以外は相談や教育費に限定することにします。
 私たち与党が今回、年金特例法案と社保庁改革法案を提出し、早期に成立を図った理由がご理解いただけるでしょうか。私たちの暮らしの根幹となる年金制度
の改革は、少子高齢化社会を迎えるわが国の最大の懸案です。様々な意見を広く聞き、慎重に議論を行うことはもちろんですが、行うべき改革は必ず実行すると
いう強い意志を持ってこの問題に取組んで参ります。

新 藤 義 孝

日中・日韓を中心に日本の海洋問題について (質疑) 衆議院外務委員会-17号 2007年06月08日 

     日中・日韓を中心に日本の海洋問題について(質疑)

 

        衆-外務委員会-17号 2007年06月08日  

 

 

○山口委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新藤義孝君。
 

○新藤委員 おはようございます。自民党の新藤義孝でございます。

 一般質疑を外務委員会においてさせていただきますこと、ありがたく御礼を申し上げます。

 また、一生懸命に仕事をしているということを、私もこの場できちんとまず申し上げたいというふうに思います。

 そして、麻生大臣、連日、本当に激務の中、お疲れさまでございます。大臣はたしか、何かのインタビューの中で、大体外務大臣を二期続けてやると体が壊れる、そういうようなお話をされておりますが、全くその兆候は見られませんけれども、私は、元気に御活躍いただいていることは非常にありがたいと思います。

 そして、サミットの外相会談からお帰りになったところだと聞いておりますが、今そのサミットが行われているわけでございますが、外務大臣、本来サミットの中に参加された方がいいんじゃないかなと思うんですが、どうでしょうか。

 

○麻生国務大臣 新藤先生、昔は、外務大臣・大統領、外務大臣・総理大臣が同席という機会が多かったのは事実だと存じます。

 最近では、例えばハノイのAPECでしたか、あのときは安倍総理の同行を命じられましたのですが、このところのサミットは、外相会議をその一週間前にやることになりますものですから、大体サミットのときには外務大臣は同行しないというのが慣例になっている。約二週間ぐらい国会をあけることになりますので、そこのところが大きな理由。

 ほかの国を見ていますと、アメリカは同行、ロシアは同行、中国も同行でありますけれども、イギリス、フランス、イタリアは同行していない、ちょっとカナダは記憶がありませんけれども、国によって対応が違うと思います。

 確かに、話が出たのを同席した外務大臣二人でぱぱぱっとその場で詰めていくというのはこの間ハノイで二度ほど経験をしましたので、同行した方が話が早く進む場合も多いので、効用はいろいろあろうとは存じます。

 

○新藤委員 これは言わずもがなのことでございまして、外務大臣が全体の世界の首脳が集まる中で同席をして、そしてスピーディーにいろいろな日本の意思表明を行う、絶対必要なことだと思います。また、現在は岩屋副大臣という立派な方がいるわけですから、やはり安心して外務大臣が出ていけるように、これは委員会としてもぜひそういうふうに応援をしていきたいな、このように思います。

 それでは、きょうは、日本の海洋問題について、特に日中、日韓にかかわることを中心に質問をさせていただきたいと思います。

 本年二月四日、中国の海洋調査船東方紅二号、この船が、我が国に事前通報のあった海域外で海洋調査、また日本の主張するEEZ内に入って海洋調査を行ったわけでございます。この件について、日本政府としてどういう対応をとり、そしてまた、中国側からどういう反応があったのか、その反応に対して、我が国はどういう態度をとっていたのか、また、この区域に関しましては、海洋調査に係る相互事前通報の枠組みというのがあったわけですが、これが生きていなかったのかどうか、この辺、まずただしたいと思います。

 

○麻生国務大臣 御指摘がありましたように、去る二月の四日、中国海洋調査船東方紅二号、事前通報海域外ということになりますが、ここにおいて海洋調査を実施されたということは確認されております。これは明らかに、東シナ海におきます日中間の海洋調査活動相互事前通報の枠組みというものから見ますと、反していることははっきりしておりますので、その日に外交ルートを通じて中国側に強く抗議をしております。

 これに対して中国よりなされた回答は、基本的に尖閣諸島に関する中国側の独自の立場というのが、中国側には中国側の言い分がありますので、言ってきましたが、もう全然受け入れられないということで、二月の十六日に、私の方から、李肇星というのが外務大臣だったんですが、その人が当時日本に来ておりましたので、この枠組みの遵守というものを求めて、枠組みは堅持するという返答を向こうからもらったところではあります。

 その後現在までのところ、この枠組みに反する海洋調査が行われていることはございません。

 

○新藤委員 それでは、日中間の海洋調査活動の相互事前通報の枠組み、これは平成十三年から取り決めがあるわけでございますが、これまでの日本側と中国側が行った事前通報の実績というのはどうなっているのか。

 

○岩屋副大臣 敬愛する新藤先生にお答えを申し上げたいと思います。

 今先生御指摘の枠組みですけれども、平成十三年二月に、東シナ海における日中間の海洋調査活動に関する相互事前通報の枠組みが成立をしております。

 その実績はどうかというお尋ねでございますけれども、中国側は、これまで二十六件の事前通報を行ってきております。我が方でございますけれども、この枠組みの対象となっている海域における日本側の調査は、そもそもほかの海域におけるものと比べて少なくて、我が方の実績はこれまで一件ということでございます。

 中国側は、十三年以降、かなり枠組みの効果という意味では上がってきているというふうに私どもとしては判断をしております。

 

○新藤委員 この枠組み自体は評価をするものです。ただ、これはなぜ枠組みができたかといいますと、やはり、平成十三年の枠組み以前に、中国の船が我が国のEEZを越えて頻繁に調査を行う、これによっていろいろなトラブルが出てきているということがまず原因だったと聞いております。

 実は、この問題を、私はずっと取り上げてきているんです。去年の外務委員会でも、海洋問題について、韓国のことでしたが、指摘をいたしました。

 問題は、日中の場合は、この口上書があいまいなところに盲点がある。いわゆる、日本側は中華人民共和国の近海について調査を行う場合、中国側は日本側が関心を有する水域である日本国の近海と、よくわからないわけですね。どっちともとれるような、これが外交ですよと言われればそれまでなんですが。

 いろいろ調べると、例えば、この区域には、資料をお配りしておりますけれども、資料の2の方です、「日本の二百海里水域概念図」という中にありますけれども、日中暫定措置水域という日中漁業協定の取り決めがあるわけですよ、同じ区域ですけれども。日中漁業協定では、この暫定水域を事細かに、緯度、経度を協定書の中に書いて、そして水域を画定しているわけです。

 ですから、こんなふうにあやふやに、せっかく取り決めがあるのに、中国は勝手な自分の主張をして、結果的にはEEZに入ってきてしまう、こんな無駄なことが起きないように、これはきちんとした海域の具体的設定というのを交渉してみてはどうかと思います。

 そして、この間、温家宝さんが来たときに、東シナ海を平和・友好・協力の海とする、そしてより高いレベルで政治対話を行うということも日中で決めているわけですから、これは大臣、ぜひ知恵を使って、まず、日中間のこういう無駄なことが起きないように、具体的な海域の設定というものを交渉してみてはどうかと思うんですが、いかがでしょうか。

 

○岩屋副大臣 先に私から事実関係だけ申し上げたいと思います。

 先生御指摘のように、この枠組みの中では、中国側が事前通報を行うべき海域を日本側が関心を有する水域である日本国の近海というふうにしておる、そしてまた、日本側が事前通報を行うべき海域は中華人民共和国の近海としている、そこがあいまいではないかという先生の御指摘でございますが、先生もいみじくもおっしゃいましたけれども、日中間では東シナ海について境界画定ができないまま今日を迎えているわけでございまして、したがって、双方の境界画定に関する立場に影響を与えないという考え方に立って真剣に交渉を行った結果、こういう表現で日中間で一致をしたということでございます。

 しかし、先ほども申し上げましたが、この枠組みができる前は、中国側の違反件数は年平均二十一件、枠組み成立以降は年平均二件、これは、二件であればいいということを言っているのではなくて、一件でもあればけしからぬということなんですけれども、そういう境界画定ができていない状況で、ある意味では妥協の産物でできた枠組みですけれども、一定の効果は上げてきているというふうに考えているところでございます。

 

○麻生国務大臣 今副大臣の方から御答弁申し上げましたけれども、基本的には、境界画定というものがなされていないという状況下において、双方の立場に影響を与えないようにしようということで一定の合意をつくり上げた、妥協の産物といえば妥協の産物、外交といえば外交ということになろうかと思います。

 おかげさまで、少なくとも今まであったトラブルの件数は減っておりますので、それなりの効果は上がっているんだと思いますが、今後の検討として、今言われた点は、日中の話がさらに進んでいくという段階になって、双方の間に、平成十三年のことで大分事情が違っておるとは思っておりますので、慎重に検討すべき御提案だと存じます。

 

○新藤委員 それでは、日韓の方についてお話をさせていただきます。

 まず、お配りさせていただきました外務委員会提出資料1、「展示パネル撤去」という新聞記事でございます。

 実は私、去年の五月三十一日の外務委員会でこれを取り上げております。韓国が竹島領有の根拠としている地図、これが今から五百年ぐらい前の地図なんですけれども、五百年前の地図から韓国は竹島をちゃんと地図として表記しているよ、こういう主張をしているんですが、実は、その地図は、鬱陵島の韓国側に竹島と思われる島を表記してあるわけなんです。ところが、独島博物館というのが鬱陵島にあって、その博物館の前の展示パネルには、鬱陵島よりも日本側に、いわゆる今の竹島と似たような位置にわざわざ位置を置きかえてしまっている、おかしいじゃないか、これは事実をちゃんと訂正することを申し入れろ、こういう話をしたわけです。

 結果として、今こうやって、五月五日付の新聞では展示パネルを撤去する模様だと書いてありますが、外務省は確認しているんでしょうか。

 

○麻生国務大臣 今御指摘のありましたこの新聞の記事ですけれども、撤去の件については、その報道があったということは我々も承知しておりますが、現地に人を送って博物館を訪れた上で確認したかといえば、そこまではいたしておりません。

 いずれにいたしましても、これは領有権にかかわる問題の話であります。これまで平和的に解決をということでいろいろやってきておりますけれども、これは双方でやはり客観的な事実というものをきちんとしておかないと、お互い、昔の話とか伝聞報道だけでやるのも甚だ危険でもあります。私どもとしては、こういった点については非常に大事なところでもありますので、外務省のホームページにおきましては、竹島問題の記述を大幅にふやした上に、英語版と、加えて韓国版と両方を載せるというようなこと等々、努力を今行わせているところであります。

 

○新藤委員 ありがとうございます。

 私は、昨年提案させていただきまして、当たり前のことなんですが、言うべきことは言う、そして、客観的な事実に基づいて正しい歴史認識を両国民が持つということがとても大事なことだと思っておりますので、こういうことをおろそかにしないで、確認していってもらいたいと思います。まだやっていないと思います、この新聞記事によっても。しかし、こういうことが始まっているんだから、きちんと確認してわかれば、それは我々国民に知らせてくれなきゃ困る、こういうふうに思います。

 時間がございませんので少しはしょりますが、今度は日韓の海洋調査の問題についてお尋ねします。

 これもまた、五月三十一日に、EARDOという韓国の海洋調査船が鹿児島県沖の我が国EEZ内で事前の同意なく海洋調査を行ったわけです。これはもう新聞報道で明らかですから、これに抗議を行った。しかし、韓国は、これは我が国のEEZだ、だから日本に言う必要はないと言い募っている。そして、日本は抗議した、向こうはうちの海域だといって、終わりになってしまった、これなんですね。中国のときも同じなんです。抗議をするけれども、結果的にはその後何もできないわけです。

 ですから、この竹島周辺の海域は非常にセンシティブな海域ではありますが、いわゆる科学的な海洋調査というのは、これはどの国もが持っている固有の権利なんだから、その海洋調査をしようとすると昨年の四月には大騒ぎになってしまった、こんな無益な争いをする必要はないわけでございまして、その意味では、昨年大臣にこれもお答えをいただいておりますが、これから日韓のそういう暫定的な枠組み、また海洋調査の協力体制をつくろうじゃないか、こういうことでお取り組みいただいているわけです。

 しかし、もう一年たっています。現状、なかなか進んでいないような話も聞いておりますけれども、これはどうして進まないのか、またこれからどうすれば解決していくのか、大臣のお考えを教えていただきたいと思います。

 

○麻生国務大臣 昨年の騒ぎ以後、この問題については、これはまことに双方にとりまして、竹島の領有権にかかわる話でもありますので、したがって、かなりセンシティブな話ではあるんですが、今言われましたように、科学的な調査をするのに何の問題があるんだという話で、両方で調査をすればいい話ではないかということもいろいろ言っておりますけれども、向こう側としては、なかなか話が込み入ったまま、ずっとその後引きずっております。

 先週の日曜日、済州島で行われました日中韓の外相会議のときに、日韓だけの外相会議を別にやっております。この問題につきまして、私どもとしては提案をしておりますのに対して、向こう側も向こう側で、こういった点を調査したいという話で、それはこっち側の地域だから、そっちが受け入れないのにそちらの話だけ受け入れろなんという話はとてものめないという話のまま、話が平行線をたどっております。

 いずれにいたしましても、この問題は、昨年と同じような大騒ぎを起こすのは愚かなことだと思いますので、双方で局長レベルのところで話をしようというところまで来ておるというのが現状であります。

 

○新藤委員 これは、やはり歴史に学ぶ必要があると思うんですね。日韓基本条約の精神、竹島は棚上げ、そしてお互いの、互恵の海、こういうことで先人がつくってきたことなんですから、この精神にのっとって、しかも私、もう一度申し上げますけれども、さっき日中の暫定水域の話をしましたけれども、日韓の暫定水域もこの地域にあるわけです。ここでは、実は漁業調査は月一回のペースで行われているわけです。

 ですから、先ほど岩屋副大臣は、境界画定に影響があっては困るのでということで非常にセンシティブになっていると。しかし、境界画定に影響しない、そしてここは、とにかく海洋調査というのは科学的な、また国が持っていなければ困るものなんだから、これについて安全に、しかも自由に調査ができるように、こういう枠組みを早急につくるべきだし、そのときには日中と同じように、日韓のこの枠組みの中では具体的な海域をきちんと画定する、これが大切だと思いますので、ぜひそういったことで今後交渉をやっていただきたい。

 もう一年かかっているんですが、中国よりもちょっと時間がかかっていますね。ですから、かなりこれはややこしい話なんだなと思いますが、そこは逆に、妥協するというよりはもう基本を、同じテーブルにのらないで、きちんとこれは科学的な調査だという観点でやっていただきたい、このように思います。

 続きまして、それに関連いたしまして、それでは、そもそも日本の海洋調査はどんなふうに行われてきたのか、日本のEEZ内の尖閣周辺、それからガス田の周辺、さらには竹島周辺、この地域に対して日本の海洋調査はどのようにこれまで行ってきたのか、政府の方から教えてもらいたいと思います。

 

○加藤(茂)政府参考人 お答え申し上げます。

 海上保安庁では、これまで日本周辺海域におきまして、海図作成に必要な調査を実施してまいりました。

 東シナ海におきましては、これまで数次にわたりまして調査を実施しておりますが、最近では、平成十五年度に石垣島北方海域におきまして海底地形等の調査を実施しております。また、日本海につきましては、沿岸域を中心に調査を実施しております。竹島周辺海域におきましては、昭和五十年度に海底地形の調査を実施しているところでございます。

 

○新藤委員 適宜やっているんだと思うんですが、東シナ海やガス田周辺、東シナ海においては、平成十五年ですけれども、ここのところで調査もやっている。しかし、今昭和五十年とおっしゃったでしょう。三十年前じゃないですか、竹島周辺は。

 ですから、本来我々が通常、当たり前にやらなければいけない、またできるはずの調査が三十年も手つかずでいる。そして、去年それをやろうとしたら大騒ぎになって、韓国から船が出てくるようなことになっちゃった。この異常な状態は早く解消しなきゃいけない。

 しかし一方で、漁業の調査、例えば海流だとか水温だとか塩分だとか、要するに海洋基本調査と同じような項目は、月に一回のペースでこの同じ海域でやっているわけですよね。だから、そこは少し頭を切りかえた方がいいんじゃないかと私は思っております。これはぜひ、我々でそういうことを研究していく必要があるんじゃないかと思います。

 では、もう一回念のために聞きますけれども、日本船舶の安全航行のために、日本のEEZを越えて他国、中国、韓国のEEZ内で我が国の海洋調査というのはやらなくていいんでしょうか。

 

○加藤(茂)政府参考人 お答えいたします。

 船舶の安全航行のために必要な海図の情報と申しますのは、一般的に沿岸国が整備することとされております。我が国が中国や韓国のEEZを含んだ海図を作成する場合には、当該部分につきましては中国や韓国の海図の情報を利用しております。

 

○新藤委員 これはどういうことかというと、旗国主義ですから、沿岸国がいろいろな海洋の調査を行って、船舶の安全航行や、いわゆる国が必要とするものは相手国に提供できるわけですよ。

 私もちょっと調べたんですけれども、例えば漁業の関係でも、東シナ海の中国寄りにクラゲが大量発生している、それがこっちに押し寄せてくるかもしらぬ、では日本の漁具に影響を与えるから調べに行くよと言うと、中国が、いや、うちのデータを差し上げますよと。だから、EEZの中でお互いに調査をやっていれば、十二分に海は機能していくわけなんですよ。

 だとすると、なぜ他国のEEZに無理やり入るのか。通常の海洋調査であれば、データは、必要最低限のものは得られるわけなのに、しかし入ってくる。ここを我々はよく注意をしなきゃいけないし、単に海洋調査であるから、警告をして出ていってもらいましたのでで済ませてはいけない問題が内在しているんじゃないか。

 これ以上は憶測になってしまいますから、どうしようもありません。しかし、どう考えてもおかしい。漁業ならば自由に行き来して、海域まで設定しているのに、この海洋調査に限ってこれだけセンシティブになる。この問題は、我々はもっときちんと対応していかなければいけない問題なんじゃないかな、これを指摘しておきたいと思います。

 そこで、とにかく我が国の国土面積、これは東洋の小さな島国だと言う人がいますが、大臣はきっとそう思っていないに違いないんです、私も思っていません、日本はすごく大きな国だと思っています。しかし、国土面積は世界じゅうの六十位です。しかし、EEZまで含めると実に世界第六位の、日本の権益が及ぶ面積を持っている。日本は、海洋大国のはずなんですが、なぜか東洋の小さな島国、こういうふうに言われてしまう。

 そこで、これはさっきの資料にもありますが、今私は中国と韓国のところを問題にしましたけれども、日本のEEZというのは広大なものがあります。特に、北方領土近辺はどうなっているんだ、やっているのかねと聞きたくなってしまうぐらいですね。

 では、これだけの広大なEEZを適切に管理するための、資源も、それから漁業も、海洋も、いろいろな海底地形も、そういうものの海洋管理を総合的に行う担当部署というのはどこなんでしょうか。

 

○麻生国務大臣 これは、所掌事務ということになりますと、日本の領海とかEEZに関しましては、各省庁おのおの所掌事務がありますので、保安庁の部分とか我々外務省の部分とかいろいろありますので、そういった意味で、各省庁が所掌事務に従って行っているというのが正式なお答えということになろうと存じます。

 先般、おかげさまで成立いたしました海洋基本法におきまして、総合海洋政策本部を設置することによって、海洋に関する施策を総合的かつ計画的に推進するということが目的の一つということになっております。したがいまして、この本部の設置後は、これらの海洋に関する施策を総合的に担当するというのはこの設置本部ということになろうかと存じます。

 今、総合海洋政策本部というものの、所掌をいたしておりますので、外務大臣もその本部員なんですが、本部長が内閣総理大臣ということになっておりますので、ここが総合的な対策をやっていく本部として機能していくということになろうと存じます。

 

○新藤委員 これからできる総合海洋政策本部、これをきちんと機能させなきゃいけない。現状では、どこだという一つがないんですよね。八省庁、九省庁で共管しちゃっているだけですから。

 ですから、とにかく政府として一元管理をする総合的な窓口が絶対必要だ。しかも、日本の海洋調査を、全海域において、長期的な計画をつくって、漏れのないように、また、ひょっとして私たちが見落としているところがあるとするならば、そういうものをチェックする必要があると思いますし、例えば、海洋調査は、一つの船で二つのチーム、三つのチームが一緒に相乗りをしてやることだってできるわけです。そうすれば予算も削減できるわけです。だから、こういうことをよく工夫していかなければいけないんじゃないか。大臣は主要メンバーでございますので、これから海洋担当の大臣ができるわけなんですが、全内閣で、この問題ははっきりと具体的な項目を挙げて仕事を進めていただきたい、このように思います。

 そこで、一つお尋ねします。

 海洋基本法と海洋構築物安全水域設定法、これが成立いたしました。しかし、この法律だけでいいのかどうなのか。これに、さらに国内法の整備を図る必要が私はあるんじゃないかと思っているんです。例えば、中国、韓国の調査船が入ってきましたけれども、取り締まる法律はあるのか。これはもう時間がないので、私、このことでやりとりをしようと思っていたんですが、私が申し上げます。日本には取り締まりをする法律はございませんから、警告しているだけです。しかし、中国、韓国には取り締まりの法律があって、国内法に基づいて処置をすると言ってきているわけです。

 我々は海洋大国なのに、海洋の法律は果たしてきちんと整備されているのか。特に、安全保障や日本の権益を確保する、これは国家の一番の使命です。ここの部分において、この海洋の管理に関する法律を、さらに個別的なものを整備していかなきゃいけないんじゃないかと私は思っております。ですから、今立法上どんな検討が必要と思っているのか、これをお答えいただきたいと思います。

 

○加藤(隆)政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどもお話が出ましたけれども、総合海洋政策本部が設置されましたら、今後、総合的かつ計画的な推進を図るために海洋基本計画を定めるということになっております。その過程におきまして、海洋に関する問題に対しいかなる法律の立法が必要であるかという検討が行われていくというふうに考えておるところでございます。

 

○新藤委員 これは、我々議員がやらなきゃいけないことだと思います。しっかり研究して、このことは早急に整備していかなければいけない。海洋基本法そのものが議員立法なんですから、こういう分野は各省庁にまたがり過ぎておりますので、私どもがやっていきたいと思いますが、外務省としても、また内閣官房も、しっかり考えてもらいたいと思います。

 時間が過ぎましたので、一点だけ、最後に申しわけございません。

 

○山口委員長 特別許します。

 

○新藤委員 海洋基本法、四月二十七日公布ということは、三カ月以内に施行するということですね。これは、そうすると七月末になるんだけれども、せっかく海洋の法律を施行するのならば、例えば海の日とかにしたらどうか。みんなに、国民によくわかっていただく、ああ、海の日に海洋基本法が施行されました、こういうような国民に周知できるように工夫したらどうかと思うんだけれども、これはいつ施行する予定なんですか。

 

○加藤(隆)政府参考人 海洋基本法の施行日につきましては、現在政府において検討中でございますけれども、長年、海の記念日や国民の祝日、海の日として国民や関係者に親しまれまして、また平成八年に国連海洋法条約が我が国について発効いたしました日として、七月二十日が一つの候補として考えられているところでございます。

 

○新藤委員 特別に許可していただきましてありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

第131号 島国から海洋国家へ 「海洋基本法」の制定について



 前回の「地理空間情報活用推進基本法案」に引き続き、今号も国家基盤を整える重要な法律を皆様にご紹介させていただきます。「海洋基本法」は議員立法として国会に提出され、4月20日成立いたしました。私は、自民党の海洋政策特別委員会・副委員長としてこの法案に関わって参りました。


◆ 日本は世界で6位の大きさ?

 わが国は四方を海に囲まれ、大小6,800もの島々によって成り立っています。東洋の小さな島国と呼ぶ人がおりますが、確かに国土面積は世界192カ国
中60番目です。しかし、人口は10位であり、海岸線距離では世界6位、EEZ(排他的経済水域)の面積は国土の12倍となり、陸と海の合計面積では世界
で6位となる広大な領域を有することになるのです。
 そして、島国であり資源のないわが国は、外国との貿易・交流が生命線です。エネルギーの93%、食料の60%を海外に依存し、輸出入貨物の取扱量は99%が海上輸送に頼っています。海洋の安全を確保することが、国の死活的重要事項となっているのです。
 また、わが国と周辺諸国との主要な国際問題は、全て海洋がらみです。中国との東シナ海のガス田開発・尖閣諸島問題、台湾との漁業問題、韓国との竹島領有・漁業問題、ロシアとの北方領土・漁業問題等、いずれもわが国の権益に大きな影響を及ぼす重大な問題です。
 さらに、海底資源はまだ未開発のものが多く、石油・天然ガスに加えメタンハイドレードや海底鉱物資源の開発は、国の未来を拓く重要戦略分野であり、積極的な取り組みが期待されています。


◆ 縦割りでバラバラな海洋政策

 ところがわが国では、海洋政策の所管は8省庁に分かれ、漁業は農水省、資源開発は経産省、港湾整備は国交省という具合にそれぞれ別個に担当しています。
有事の際の海上自衛隊と海上保安庁の役割も明確とは言えず、わが国の最大領域である海洋の統合的な政策立案と管理体制の構築は、国家的課題だったのです。
 国際社会では1994年に国連海洋法条約が発効し、わが国も1996年に条約締約国となっています。この条約により、沿岸12カイリの領海と200カイ
リのEEZをその国の管理海域とすることが認められ、海洋の保護と有効利用が図られることとなりました。中国や韓国などは海洋問題の主管官庁を設立し、海
洋に係る国内法の整備をいち早く行いました。ガス田開発や海洋調査は海洋法条約や国内法を根拠に自国の主張を行っているのです。
 一方、わが国においては、国際条約を締結したものの、基本法をはじめ国内法の整備が行われておらず、統括する大臣も省庁もないという実に残念な状態だったのです。
 私たちは、まず自民党の平成19年の活動方針として海洋基本法を制定するということを年初の党大会で発表し、政治の強い意志でこの問題を進めていくというメッセージを出しました。
 そして、党内の海洋政策特別委員で法案の作成、関係省庁との協議をおこないました。この原案を基に、公明党との政策協議を行い、さらには民主党内のこの
問題に関心を持つ議員との協議を進め、最終的には自公民による3党提案の議員立法として今国会に提出することになったのです。


◆ 海洋基本法の制定

 今国会で成立した海洋基本法では、首相を本部長とする「総合海洋政策本部」を設置し、さらに「海洋政策担当大臣」を新設し、海洋に関する政策を統括することとなりました。総合海洋政策本部は、海洋政策の司令塔として各省庁との総合調整を行い、海洋大臣は同本部の副本部長として首相を補佐します。
 また、政府は長期的かつ計画的な海洋政策を推進するため、海洋政策基本計画を策定することを義務づけ、海洋資源開発の推進、海洋環境保全、海洋調査の推進など、12項目にわたる国の基本的施策を明記しました。
 同時に、海底資源開発に対する外国などの妨害を排除するための「海洋構築物安全水域設定法」
成立し、わが国EEZ内の海洋資源の調査・試掘の際に半径500mの立ち入り禁止区域を設定することができるようになりました。これにより、例えば東シナ
海の日本のEEZ内で、民間企業によるガス田の試掘作業が中国側から妨害された場合、海上保安庁がそれを排除するための根拠が設定できたのです。
 日中の東シナ海ガス田協議は、海洋2法の成立で両国の法制が同等になり、中国との交渉を進める上で有効な環境が整ったと思います。


◆ 島国から海洋国家へ

 本法律は自民・公明・民主3党による超党派の議員立法であり、政・学・官・民が熱心に議論を重ねて条文化したものです。8省庁が関係し政府として調整で
きなかった国家的課題を、政治のリーダーシップによって法制化した意義は大きなものがあり、私もこの作業に参画できたことを光栄に思っております。
 
今後はこの基本法を活かし、さらに具体的な個別法の整備や、予算の裏付けを与えていかなくてはなりません。特に、安全保障や航路(シーレーン)の安全確
保、資源開発や海洋調査など、国益に直結した戦略的な分野を統合的に推進していく必要があります。安倍首相を中心に、政治が先導的な役割を果たすことは言
うまでもありません。
 この機会に、私たち日本人は四面環海の中で海の恵みを受け、海洋国家として存続してきたということを再認識したいと思います。そして、世界規模で進行中
の海洋の法秩序と政策転換に対応し、日本を東洋の島国から世界の中の海洋国家に脱皮させる時だと私は考えています。

新 藤 義 孝

第130号 地理空間情報活用推進基本法案 (NSDI法案)について



 連休が終わり、皆様もお忙しくご活躍のことと存じます。4月の統一地方選挙では私の多くの仲間が当選を果たすことができました。皆様のご支援に感謝申し上げます。
 その間、週刊新藤をお休みすることになり、愛読いただいている皆様には申し訳ありませんでした。今後も参議院選挙中など公職選挙法に制限される時期を除き引き続き発行して参りますので、ご理解の程よろしくお願い申し上げます。
 さて、現在開会中の通常国会では、重要法案の審議が続き、国会の論戦も激しさを増しております。私たち安倍政権はこの国の戦後体制を見直し、新しい国の
かたちをつくるための骨格づくりを進めております。憲法改正のための国民投票法案や教育再生関連三法等の審議には、私たち議員は「国を変える」という緊張
感を持って臨んでいるのです。
 私も皆様から選出いただいた国会議員という大切なお役を果たすべく、精一杯活動しております。今号では、新たな国づくりに向けて現在私が取組んでいる新しい法案をご紹介させていただきます。


◆ 新たな国家基盤・NSDI法

 
地理空間情報活用推進基本法案(NSDI法案)は、自民党内で推進部会をつくり、私が事務局長として法案作成に力を尽くしてきたものです。5月9日に法案
審議の日程が決まり、11日には内閣委員会で私も法案提出者として答弁に立ち、15日には衆議院本会議で可決する予定です。
 この法案の目的は、これまで別々に行われようとしていた二つの大きな仕事、①電子的な地理情報システム(GIS)と、②衛星測位システム(PNT)を合
体させ、一体的に推進することにより、わが国の地理空間情報のより高度な活用や、行政や民間による新しいサービスの提供を行おうとするものです。(詳しく
は以下の資料をご覧下さい)

  「地理空間情報活用推進基本法案」の概要(PDFファイル)
   同法案が目指す社会のイメージ(PDFファイル)


◆ ①地理情報システム(GIS)とは

 GISとは、デジタル化された地図の上に、例えば防災施設の分布、老朽化木造住宅の分布、一人暮らしの高齢者の分布など様々なデータを重ね合わせて表示できるシステムのことで、視覚的で高度な分析と迅速な判断を可能にするシステムです。
 1995年1月に起きた阪神淡路大震災を契機に、国土の境界から、道路などの社会基盤施設の位置、土地の境界に至る各種図面の基盤となる地理空間情報については、デジタル(電子)化が進んできました。
 しかし、同じ基盤的なデータが各省庁、各自治体、各部局ごとに重複して整備され、しかもそれらが互いに重なり合わないものになっているという問題があります。
 また、これらのデータは、例えば道路の新設や拡幅などに伴い、常に新しい情報に更新され、誰もがこれを活用できるようにしておく必要がありますが、その情報の更新・流通の体制が整備されていないという問題もあります。
 これらを解決するために、各システムの連携・統合の強化を図り、様々な情報の重ね合わせを可能とする、より高精度で新鮮な「共通白地図」をつくり、その共用化を行うものです。


◆ ②衛星測位システム(PNT)とは

 衛星測位とは、複数(少なくとも4個)の衛星から送られてくる位置と時刻の情報を受信して、地上における特定の事物の正確な位置を求めるシステムです。最もポピュラーなのが米国のGPSシステムです。
 わが国では、カーナビに代表されるように、米国のGPSを利用して衛星測位がすでに国民生活や国民経済に深く浸透しており、重要な社会基盤となっています。
 これを補完・補強するのが我が国独自の「準天頂衛星システム」です。この衛星は、日本上空からオーストラリア上空を結ぶ8の字型の軌道を24時間で周回
するもので、ほぼ真上(準天頂)の位置から測位信号を送り続けることになります。これにより、ビルなどの遮蔽物の影響が克服され、測位可能な時間帯が大幅
に増加するとともに測位精度も飛躍的に向上します。


◆ 期待される効果

 この法案の実現により、人や物の位置と時間を正確に測定し、国土基盤地図上で特定・捕捉できることになります。これにより、保護者が登下校時や外出時の
児童の行動を見守る「児童見守りシステム」や、携帯電話から110番、119番電話をかけると通報者の位置を警察や消防が自動的に把握できる緊急通報シス
テム等のサービスや、災害時の自動車通行不能箇所や火災状況の把握など、市民生活の安心・安全度の飛躍的な向上が図られるようになります。
 もちろん、都市計画、道路、電機、ガス等、行政に必要な地図データの共有・一元的整備や、住民・事業者のための電子申請など行政の効率化や高度化が図られることはいうまでもありません。


◆ 夢の実現に向けて

 そして、この施策は世界で初めての試みであり、他国に先駆けてわが国が実用化できるならば、そのビジネスチャンスは国内のみならず世界中へ広がることも期待できます。
 世界的科学誌ネイチャーでは、地理空間情報技術は、ナノテクノロジー及びバイオテクノロジーとともに将来が期待される三大重要科学技術分野のひとつとされているのです。
 本法案は役人による政府提案ではなく、議員立法です。昨年6月に国会に提出されておりましたが、これまでの間、継続審議となっておりました。与野党の国会運営のはざまにあって、審議を始めることができなかったのです。
 今回は、自民・公明・民主各党の問題意識を共有する議員たちが、何とか状況を打開しようと与野党の壁を越えて意見交換し、法案の成立に向けて力を尽くしました。統一選の合間をぬって国会議員による協議が続けられていたのです。
 国家の基盤を整えるという大義に向けて協力体制ができたことも私の喜びとするところです。衆議院を通過しても参議院審議が残っており、法案成立まではもう少し時間がかかりますが、会期末に向けて精力的に作業を続けて参ります。

新 藤 義 孝

第129号 投票へ行こう!~統一地方選挙にあたり~



◆ 人口動態から見るわが街の変貌

 私たちの街、川口・鳩ヶ谷は、荒川を渡ると東京都に入るという埼玉県南に位置し、住宅都市化が進みマンション等の建設が続いています。
 
昨年10月に50万人を超えた川口市の人口は、今年
平成19年1月1日現在501,101人をかぞえ、4年前の平成15年に比べ20,305人増加しています。下記の表をご覧いただければお分かりのよう
に、この4年間で、出生が約2万人、転入が約12万人で、合計14万人の新市民が生まれたことになります。
 同様に4年前との比較において、鳩ヶ谷市の場合、人口は3,313人の増加ですが、出生と転入をあわせた新市民は約17,000人にのぼります。川口市も鳩ヶ谷市もともに約28%、およそ4人に1人が新市民だということになるのです。
 マンションの林立ばかりでなく、埼玉高速鉄道開通による都心へのアクセスの利便化、映像・情報産業を核とした次世代産業を集積した複合施設スキップシ
ティの誕生、大型ショッピングモールと居住区画が融合したリボンシティの建設、行政・商業複合施設きゅぽ・らを始めとするJR川口駅前大規模再開発も完了
し、大きく変貌する街並みとともに、市民も多数入れ替わり、市民意識も大きく変化しています。
 今月末からいよいよ始まる統一地方選挙においては、そうした市民ニーズの変化や多様性をどれだけ満たすことができるのかが、大きな争点のひとつになると思います。


◆ 国・県・市のパートナーシップ

 たとえば、私たちの街の安全ということを考えてみましょう。安全で安心できる暮らしを確保するため、増大する治安活動の需要に対し警察官を増員すること
を決めるのは、国会議員の役割です。そして、増員された警察官をどの所轄に配属するかを決めるのは、県会議員の仕事です。さらに配属された警察官が、街の
治安を維持するためにきちんと働いているかどうかを見守るのが、その街の市町村会議員の役目です。
 同様に、教育についても、学校の教職員数を決めるのは国会議員です。そして、教員を採用し、どこに赴任させるかを決めるのが県会議員であり、市町村会議員はその教員を街に受け入れ、教員の仕事を見据えます。
 このように、法律をつくるのが国会議員、環境を整えるのが県会議員、実践するのが市町村会議員の役割なのです。私たちの暮らしをより良くするためには、国政と県政、市政がひとつの流れのように連携することが重要だと私は考えています。


◆ 分権改革による地方自治の重要性

 小泉内閣から安倍内閣へと一貫して継続しているのは、「小さな政府」と「地方分権」というわが国の構造を改革する大きな仕事です。国と地方の税・財源・
権限を見直す三位一体の改革は、地方自治に大きな変化をもたらしました。平成18年度の税制改正においては、国から地方へ3兆円の税源が移譲されたことは
皆様ご存知のことと思います。
 今年6月以降、皆様に納めていただく税金についてご説明します。年収500万円で、専業主婦の妻と子ども2人という4人家族の会社員の場合、国税である所得税は月々2,800円、地方税の住民税が11,300円となり、従来とは逆転し、国に納める税よりも地方への税の方が多くなります。これこそが三位一体改革の姿なのです。
 そして、増えた地方税の使途を決め、使い道をチェックするのが県会議員・市会議員の役割です。このことにより、今まで以上にその地域にあわせた政策が遂
行されることになります。地域住民の代表である地方議員の重要性が、これまでよりも更に高まっていることがお分かりいただけると思います。


◆ 投票に行こう!

 選挙の際の低い投票率は大きな問題となっています。
 有権者の半数以上が棄権をしている選挙は、その街の声を反映したものだとは言い難いでしょう。政治に携わる者として、投票率の低下は非常に残念なことで
あり、しかも由々しき問題であると言わざるを得ません。投票率は、その選挙区(地域)にどのような影響を与えるのでしょうか。行政側から見ると、投票率の
高い地域から選出された議員の意見や要望は、数多くの住民の声として、より説得力の強いものとして受け取られます。ですから投票率の低い地域の場合は、そ
の逆になってしまうのです。自分の住む地域の向上にとって、投票率というものが大きな影響を与えているということを、私たちひとり一人がはっきりと認識す
ることが大事なのです。
 私たちが住むこの街の舵取りをするのは私たち自身であって、政治や行政はその実行者にすぎません。そして、その民主政治の根拠となるのが選挙であるはずです。選挙によって示された市民の意志こそが、この街の将来を決めるのです。
 投票という行為は私たちの意志を政治に反映させる最も大切で直接的な手段です。しっかりと各候補の公約、政策に耳を傾け、見極めていただき、皆さんの声をより強いものとして政治に反映させるためにも、ぜひとも皆さんで投票に行こうではありませんか。

新 藤 義 孝

第128号 「硫黄島」がもたらしてくれた縁 -私たちが受け継ぐもの-



 
先日、アカデミー賞の発表がありました。作品賞、監督賞、脚本賞、音響編集賞の4部門にノミネートされた「硫黄島からの手紙」も、大いに話題を呼びまし
た。日本人俳優による日本語の映画がこれ程高い評価を得たことは望外の喜びであり、62年前の兵士たちの想いは今こそ報われた、と感じています。
 これまで週刊新藤では何度かこの硫黄島や祖父・栗林忠道のことをお伝えしてきました。映画の公開を機に孫の私にもテレビ番組や新聞雑誌から取材があり、先祖への供養のつもりで出来るだけ協力をさせていただきました。
 この数ヶ月、私のところへも沢山の方から感想や激励のメールや手紙をいただいております。映画をインターネットで検索し、私のホームページにたどりつ
き、「栗林中将の孫が国会議員をしていると初めて知りました」という方もいらっしゃいました。皆様のご厚情に心より感謝申し上げます。


◆ 作家 梯 久美子さんのこと

 硫黄島関連書籍の中でも評価の高い「散るぞ悲しき」(新潮社刊)。
祖父 栗林忠道の生涯を綴ったノンフィクションです。一昨年の発刊ですが、息の長いベストセラーとなっています。雑誌のフリーライターだった梯(かけはし)久美子さんの作家としてのデビュー作となります。
 この書籍が刊行された頃、ある雑誌に梯さんが硫黄島に関する記事を寄稿しました。その雑誌の表紙は、偶然にも渡辺 謙さんだったそうです。映画の配役はもちろん決まっておらず、不思議な出来事として梯さんから教えてもらいました。
 この作品は昨年の大宅壮一ノンフィクション賞を受賞しましたが、梯さんは、戦争で命を失った人のことを書いて世に出たことをとても気にしていると言い、
賞金の全額を硫黄島協会に寄付して下さいました。そして硫黄島協会の皆さんと一緒に靖国神社を参拝して下さったのです。


◆ 映画がもたらしてくれた縁

 「硫黄島からの手紙」の脚本は日系米国人のアイリス山下さんで、シナリオライターとしてのデビュー作です。父親の実家は何と川口市戸塚であり、アイリスさんは何度も川口に里帰りしているそうです。これも偶然とはいえ不思議な縁です。
 栗林忠道役の渡辺
謙さんには今回の映画化を通じて素晴らしいご縁をいただいたと感謝しております。私は松代にある栗林の墓参りを始め、何度もご一緒させていただきました
が、実に謙虚で気さくな方でした。一方で役作りにかける熱心で真剣な姿勢に、世界のトップ俳優としての心意気と誇りを垣間見させていただきました。
 渡辺 謙さんのおかげで、私は映画のスクリーンの中とはいえ、これまで見たことのなかったおじいさんに会うことが出来たのです。


◆ 粛然とした予算委員会

 19年度予算の審議が始まった2月9日の予算委員会で、自民党の丹羽総務会長は、90分にわたる質問の最後をこう締めくくりました。
「総理は映画『硫黄島からの手紙』をご覧になったそうですが、一国の最高指導者の目でどのようなご感想をお持ちになったのかお聞かせ下さい」
 この予算委員会はテレビ中継もされていたので、ご覧になった方も多いかもしれません。
 総理は、映画を観たり「散るぞ悲しき」を読んだことをを述べた上で、「栗
林中将は、同僚の新藤義孝議員の母方の祖父にあたり、新藤議員から『硫黄島からの手紙』という書簡を集めた本をいただきそれも読ませていただきました。そ
の中には、新藤さんのお母さん、たか子さんのことを可愛がってあげる時間がなかったのが心残りだ、と記されていました。栗林中将の家族に対する愛情の深さ
を改めて感じました。
 あの灼熱の地獄で戦った兵士たちは、まさに故郷に残した両親や愛する人たちのために何とか頑張ろう、その危険を出来る限り先延ばしするために自分たちはこの苦しさに耐えようということだったのだろうと思います。
 戦後、私たちは、平和で民主的で自由な国をつくってきました。今日の平和の礎となった貴い犠牲を忘れることなく、過去の教訓もしっかりと胸に刻みつけな
がら、私たちが営々と築いてきたものに対して誇りを持ちながら、平和に対して、また我が国の国民の生命と財産を守るということに対して、政治家としてさら
に責任を果たしていくという決意を新たにしたところでございます」

 安倍総理のこの答弁に予算委員会は粛然とした空気に包まれました。


◆ 平和と慰霊のために

 東京都小笠原村である硫黄島には崩れた壕や草木に阻まれ未だ6割の遺骨が未収集のままであり、一人残らず故郷にお帰りいただくまで私たちの遺骨収集活動は終わりません。
 また、私はこの太平洋戦争最大の激戦地・硫黄島を戦没者の追悼と平和を願うシンボルの島として、誰もが慰霊に訪問できるようにしたいと考えています。この島の歴史を風化させることなく次の世代に伝えていかなくてはならないのです。
 かつての先人が自らの役を精一杯果たしたように、私も及ばずながらいただいた役を徹底的に果たしていきたいと思っています。衆議院議員として、子供たちの幼稚園長として精一杯の活動をして参ります。
 今こうした状況を、祖父栗林と、栗林が愛した娘である私の母たか子は、どんな思いで天上から見守ってくれているのでしょうか。私はこの二人に恥じない生き方をしていこうと心に誓っています。

新 藤 義 孝

第127号 神社が伝えるもの ~日本人の心とは


 皆さんは今年、初詣に行かれましたか? 今の時期には、受験の合格祈願に神社に参拝する人も多いことでしょう。
 日本人には古来、自然・祖先を崇拝対象とする信仰があり、それが風土の神に結びついて、様々な神々が伝承されてきました。神社は、古くから神のヤシロ、
神のモリといい、ヤシロは屋代(やしろ)、宮代(みやしろ)の意味で、社殿そのものではなく、祭祀にあたって神を迎える聖地を意味していました。
 6世紀に仏教が日本に伝わり寺院の建築様式も入ってくると、神の鎮まる社殿が建てられるようになりました。平安時代末以降に武士勢力が台頭してくると、
その祈願によって多くの神社が創建されるようになりました。川口市では、峯の峯ヶ岡八幡神社、東貝塚の若宮八幡社、根岸の春日神社がこの時代の創建と言い
伝えられています。
 大宮氷川神社を本社として分祀勧請した氷川神社は、東京や神奈川にも及んで230社を数えますが、最も多い埼玉県には162社あります。川口市には18
社、鳩ヶ谷市には2社がありますが、そのうちの一つ、青木氷川神社(川口市青木5-18-48)の宮司を務める鈴木邦房さんに「日本人の心」「日本再生」
という趣旨のとても興味深いお話を聞くことが出来ました。


よみがえれ日本

「蘇る(よみがえる)」という言葉があります。これは「古事記」の中に出てくる、黄泉(よみ)の国(死者の世界)へ行った伊邪那岐命(いざなぎのみこと)が生還したという神話に由来するもので、「黄泉かえる」ということが語源なのです。
 今、日本は疲れて果てているように見えます。戦後の高度成長である程度の富を得た一方で、その代償として、「個人の自由とわがままのはき違え」「モラル
の欠如したご都合主義」「未来に希望を持てない若者たち」等々を生んでしまい、現代の日本人は大切な心を見失なっしまいました。今こそこの麗しき日本をよ
みがえらせ、そして、死のフチから立ち返らせなくてはなりません。そのためにはどうしたら良いのでしょうか。そのヒントは「全国に八萬社点在する神社」の
中にあります。あなたも神社を訪れて一緒に日本の再生を目指して歩き始めませんか。
 日本再生のための第一歩は、何よりもまず日本の国柄の意味を知ることです。日本は「大和の国」です。「大和魂」を私たちは持っています。「やまと」とい
う言葉を先人はどのような考えで発想したのでしょうか。私たちの先祖がなぜ「大和」という漢字を当てたのかを考えると、先人の願いが見えてきます。あらた
めて「和」という漢字を調べますと、「やわらぐ・おだやかになる・なごやかになる」等の意味があります。大和の国の先人は、一人ひとりの「和」が国全体を
包み込む「大きな和」になって欲しいとの願いを込めてこの漢字をあてたのです。まずはこうして日本の国柄の意味を知り、民族に誇りを持ち、先人に思いを馳
せ「仲良く力を合わせ生きていく国」という自覚をあらためて持つことが日本再生の第一歩となります。


◆「感謝の気持ち」を忘れずに

 二歩目は私たちの心の持ち方です。各宗教の根底にある概念を一言でいえば、仏教であれば「慈悲」、キリスト教であれば「愛」と表すことがでるでしょう。それでは、わが国の「神道」ではどういう言葉で表現されてきたのでしょうか。それは「感謝」という一語に尽きるのです。
 先人は、自然という漢字に「カミ」と振り仮名を付けてきました。ゆえに自然は、大いなる恵みであり、脅威や畏怖の対象でもあるのです。人の力では超える
ことのできない大いなる力、これが「自然」であり「神」という捉え方をしてきました。これは、古代も現代も全く変わるものではありません。大いなる恵みを
与えてくれる「自然」「神」への感謝の心をあらためて自覚することが「日本再生の心」なのです。生きとし生けるものが、すべからく恩恵をいただく「天の恵
み(太陽・雨等)」そして「地の恵み(米・農作物等)」。更には欠くことができない、先祖、親を始めとする、「人と人とのお陰様」。こんな日常の感謝を忘
れてはいませんか。この心を取り戻しさえすれば、謙虚に生きることができ、思いやりのある日本人が「よみがえる」のです。これが「日本再生」のための第二
歩です。


◆「元の気」を取り戻す

 第三歩は、個人の元気回復をはかることです。つまり「元気に生きるヒント」の話
です。人生には悩みもあれば悲しみや怒りもあります。しかし、不安な日々が続いたり、悲しんでばかりの毎日では気が滅入るばかりで決して良い方向には進み
ません。「病は気から」ですから、すぐに病気になってしまうのです。昔の日本人はこのような気の衰えを「気が枯れる」と表現し、「気枯れ」すなわち「ケガ
レ」としてきました。そしてそれを除去するために「禊ぎ」や、「祓い」をしてまいりました。塩や水を撒いたり、神社にお参りするのもひとつの方法です。そ
の結果、人は充実した「元の気」に戻ることができます。そうです「元の」「気」と書いて「元気」と読むのです。「気」というものは「湯気(ゆげ)」のよう
なもので、些細なことによっても影響を受けるものです。そんな時は近くの神社やお寺に詣でて、いち早く「元の気」に戻して下さい。
 いろいろ述べさせていただきましたが、今の疲れた日本を回復させるのは、私たち自身なのです。今こそ古来より日本に伝わる大和魂の真の意味を自覚し(第
一歩)、感謝の気持ちを忘れずに(第二歩)、充実した元の気に戻して(第三歩)「元気な日本」を再生させていきましょう。


◆ 神社が伝えるもの

 今回お話を伺った鈴木宮司さんは「皆さんが忘れかけている大切な心が、神社の杜(もり)の奥に宿っています」と語っていました。
「社で会うと書いて「社会」となります。昔は、神社のお祭りで「顔合わせ」をし、長老から「正悪善邪」を教えられ、「秩序」を学んだのです。神社は大切な「コミュニティー」の場だったのです」とも伺いました。
 鈴木宮司さんは神職を務めながら著名な芸術家・文化人(安藤忠雄・さだまさし・鳳蘭・野村耕介等々)と対談を行ったり、ラジオ出演や講演を行うなど独自
の活動をされている方です。中でも画家の横尾忠則さんと親交が深く、青木氷川神社の社務所には、何と横尾さんの手による200号の奉納画が飾られておりま
す。
 今号では、私たちの暮らしの身近にある神社の意義について皆様にご紹介させていただきました。

新 藤 義 孝

第126号 わが街の活性化プラン-その①  (仮称)川口・鳩ヶ谷・さいたま交通総合連携構想



◆ 地域活性化に向けて

 安倍内閣では「美しい国」の実現を目指し新たな国家像を描いていくことを最大の使命としております。成長力の強化や技術革新と共に、その為の大きな柱の
一つが「地域の活性化」です。地方の活力なくして国の活力はあり得ません。また国・県・市の連携なくして地域の活性化もあり得ません。私は、国の政策が大
きく動こうとしているこの時に、私たちの街
川口・鳩ヶ谷で国の政策を実践するわが街の活性化プランをこの週刊新藤において皆様に提案し、市民の皆さんと一緒にその実現を図って参りたいと考えており
ます。
 今回はその第一弾として、新たな公共交通網の構築について提言させていただきます。


◆ 交通不便地区解消のために

 近年、私たちの街、川口・鳩ヶ谷市においては、第2産業道路の開通、埼玉高速鉄道の開業等、新たな交通網の整備が行われ、その路線付近は大きな発展を遂
げ、また周辺にはマンション等も多くつくられ、人口増の要因ともなっています。しかしその一方で、その恩恵を受けられない交通不便地区がいまだに残ってい
ます。前回の総選挙の際には、新郷、鳩ヶ谷、神根、芝などの不便地区の交通事情を向上させるために、平成20年3月に開通予定の日暮里・舎人(トネリ)線
の延伸構想を私のマニフェストでお示しさせていただきました。


◆ 日暮里・舎人線の延伸について

 日暮里・舎人線は、約1年後の来年3月に開業が予定されている、JR日暮里駅と足立区の見沼代親水公園駅を結ぶ新交通システム路線です。お台場を走るゆ
りかもめと同じモノレール方式が採用されており、道路上の高架専用軌道を走行しますので、交通渋滞や交通事故の心配がなく、時間通りに目的地に到着しま
す。また道路上空を利用し車両を小型軽量化することによって地下鉄と比べ約6割の費用で建設できます。
 そして川口市に隣接する足立区の見沼代親水公園駅からは、JR日暮里駅まで約20分で接続し、この地域の交通事情が飛躍的に向上されることになります。
 この新交通システムは、冒頭に申し上げました、第2産業道路上に建設される為、そのまま川口・鳩ヶ谷・さいたま市の先、上尾まで開通済みの道路を活用し
て延伸ができれば、川口・鳩ヶ谷だけではなく、さいたま市東部の区画整理事業が進む住宅密集地域の交通不便が一挙に解消されることになるのです。
 舎人新線の延伸は、以上のことから、私だけではなく都議会や埼玉県議会、川口市議会でもこれまで度々取り上げられておりますが、残念ながら、①東京都は
事業採算上の理由、都域外である等により延伸は現状考えていない、②埼玉県では、すでに期成同盟会もできている地下鉄7号線(埼玉高速鉄道)の延伸を優先
する。という答弁で留まっています。私も国政に復帰以来、国土交通省の関連部局とこれまで協議をして参りましたが、構想の有効性は認識されているが、具体
的な次のステップに進むのが難しい状況です。


◆ 地域公共交通の活性化法案

 私はこの現状を打開するため、今度の国会に提出される「地域公共交通の活性会に関する法律案」[法案概要] [関係資料] 詳しくはクリックして下さい)を活用し、新たな交通総合連携構想をつくってはどうかと考えています。
 この法案により、国と自治体と地域住民、交通事業者が協力し、地域住民にとって便利で利用しやすい公共交通システムをつくろうとする地域に、計画策定費補助から事業費支援まで、国が総合的な支援を行う新制度ができます。
 この新制度をわが街に導入したと仮定すると、まず始めに地域協議会を設立しなければなりません。協議会は、地域住民と川口市、鳩ヶ谷市、更にさいたま市
を加え、JR、埼玉高速鉄道、国際興業バス等交通事業者等で構成してはいかがでしょうか。そしてこの協議会によって交通総合連携構想が練られることになり
ます。
 私のアイデアを申し上げるならば、第2産業道路を活用し、舎人線と地下鉄、JR各駅を連携する新しいバス交通システムを導入してはどうかと考えておりま
す。これはBRT(Bus Rapid
Transit)と呼ばれる新方式で、輸送力の大きなノンステップバスを、バス専用レーンや公共車両優先システム(バスが通るときに信号を青にするシステ
ム)と組み合わせ、電車とバスの到着時間をITを活用してコントロールし、混雑の緩和と定時制を確保できる新たな公共交通システムであり、すでに藤沢市で
運営が開始されています。

 これは一つの例ですが、このような公共交通網構想が具体化されれば、交通不便地域の解消がなされ、わが街の活力が飛躍的に増大されることは申すまでもあ
りません。川口・鳩ヶ谷とさいたま市東部の経済圏が大きく拡大すると共に、沿線の区画整理や道路など各事業が優先的に採択され、人口増に伴う警察署の新設
等公共施設の整備も一挙に進むことが期待できます。更に交通アクセスの向上により、新たな企業立地などビジネスチャンスの増大が見込まれます。
 そしてこのような総合的なプロジェクトを推進していくためには、何よりも国・県・市それぞれの議員が連携をとり、県知事や市長、関係機関へ働きかけを行うなど政治が強力にお手伝いをしなければなりません。
 まずは今国会で法案の成立を期すと共に、わが街の構想推進に向けて仲間と共に研究を深めて参ります。

新 藤 義 孝

第125号 なぜ憲法改正か



◆ 書籍「新憲法はこうなる」

「新憲法はこうなる―美しいこの国のかたち」(講談社)という本が評判になっています。その著者は、私と親交も深く、ずっと一緒に仕事をしてきた、自民党
政務調査会主席専門員の田村重信さんです。慶應義塾大学大学院で憲法や安全保障の講師も務めている田村さんは、憲法改正の実現に自らの人生をかけ、多くの
防衛関連法制の制定や自民党の新憲法草案起草に関わってきました。そうした立場から、憲法問題を幅広い視点から解説しています。まさに、実際の憲法起草の
現場体験から著されたもので、「生きた憲法の教科書」とも言える本です。ご関心をお持ちの方は、書店に足を運んでいただきたいと存じます。


◆ 戦後体制からの脱却=憲法改正

 1月17日の自民党大会で、安倍晋三総裁は「昨年、自民党総裁に就任し、私は『美しい国、日本』をつくると約束した。国
のかたちを示すものが憲法だ。立党の精神に立ち返り憲法改正に取り組む。まず、通常国会で各党による国民投票法案の協議が進むことを期待したい。改正教育
基本法、地方分権改革推進法、防衛庁の昇格法など国の根幹をなす法律を成立させた。この礎の上に立ち、美しい国づくりに向け前進したい」
と述べるとともに、記者団に「私たちの世代で憲法改正について取り組んでいく責任がある」と語りました。
 この世代の責任とは何を意味するのでしょうか。安倍総理も私も戦後生まれ。戦争を経験した祖父や戦後の厳しさを体験した父の世代から直接に話を聞けた世
代です。昔の苦しみを知るとともに、古き良き日本人の道徳心や公共心、家族や地域を大切にする心に直接触れることのできた世代でもあります。
 昭和17年生まれの小泉前総理は、古い日本を変える、古い自民党を壊すと言って構造改革を断行されました。あとを受けた昭和29年生まれの安倍総理
(33年生まれの私)の世代は、国の改革を家づくりに例えるならば、古い建物が壊れたあとを整地し、新しい設計図を描き、新しい家を建てることが与えられ
た役割だと思います。
 働き盛りの私たちは、新しい国づくりの作業の中心となって、これまでの良いものは残し、時代に合わないものは除き、新しい規定を加え、日本という国家の在り方、目指すべき目標を憲法として打ち立てること、これこそが私たちの世代の責任と考えております。
 憲法改正に関する世論は、一般国民を対象とした調査でも、また国会議員を対象とした調査でも、憲法改正を容認する数は、すでに八割を超えています。
 本年はいよいよ本格的な議論を始められるのでは、と大いに期待しております。


◆ 憲法九条と平和主義

 「新憲法制定」、あるいは「憲法改正」を主張すると、「戦前の軍国主義を復活させ、再び日本を破滅に陥らせる考え方だ」とか「国民を弾圧し、政府の言いなりにさせようとする企てだ」などと批判を投げかける人もいます。
 哲学者の田中美知太郎氏の「憲法に『平和』と書けば、『平和』になるのであれば、憲法に『台風は日本にはくるな』と書けばよい」という有名な言葉がありますが、現実には北朝鮮による日本人拉致事件やミサイル・核開発問題といった平和を脅かす様々な事態が起きています。
 私は、自民党の国防部会長を務め、現在の自衛隊がシビリアン・コントロールの下で、国民の安全を確保し、災害派遣や国際貢献を行っていることを実感しま
した。しかし、諸外国のように軍隊としての位置づけがないために、自衛隊が海外でPKO活動をしていて、例えば、自衛隊が英国などの外国の軍隊から助けて
もらうことができても、自衛隊が離れたところの英国軍を助けることができないのです。
 日本はGDP世界第2位ですが、世界中から石油や鉄鉱石などの原料を輸入して、それに付加価値を付け製品にして輸出しているから豊かな生活が送れるので
す。世界の国々と良好な関係を保ち、空路や海上輸送の安全が保てない限り、経済の発展はありえません。我が国は世界の平和構築のための貢献を大いに行う必
要があります。
 憲法九条の骨子を、私は次のように考えます。①日本は侵略のための戦争は永久に放棄する。②自国の防衛のためにシビリアンコントロールの下に国防軍を置く。③世界の平和構築のために必要な活動を行う。
 九条改正に対し、過度のアレルギーは捨てるべきであり、戦後60年、私たちが育ててきた民主主義と平和主義にもっと自信を持って良いのではないでしょうか。


◆ 今年こそ憲法改正を俎上に

 諸外国においては、常に自国の憲法を見直し、その時代や社会に合ったものにするため、憲法改正は、米18回、独51回、伊14回、中国3回、韓国9回等、頻繁に行われているのです。
 日本のように、制定後ただの一度も改正されたことがない憲法は、世界中を見渡し、他に類がありません。
 私が所属する自由民主党は、昭和30年の立党時より自主憲法をの制定を目標として参りました。昨年11月の立党50年記念党大会では、国民に問うべく「新憲法草案」を提示しました。
 現行憲法には、日本に進駐していた連合軍総司令部(GHQ)が英語でわずか9日間で原文を書き上げたという生い立ちから、憲法改正を望みつつも社会党や
共産党等とのイデオロギー対立により「改憲」という言葉さえ出せなかった時代を経て、現在の改正素案を発表するに至るまで、様々な遍歴があります。
 今こそ日本人の手による現代の日本人と将来の日本国のための憲法を議論するときではないでしょうか。
 私は、多くの国民が憲法改正とは何なのか、自民党草案は何を狙いとしているのかを正しく理解し、健全な改憲議論が国民の間で広く行われるようになることを、心から願っております。

新 藤 義 孝

第124号 平成19年年頭にあたり 「自らの役を果たす」



 皆様には健やかに新春をお迎えのこととお慶び申し上げます。本年が皆様にとりまして輝かしい一年となりますようご祈念申し上げます。
 皆様のご支援のおかげ様で、昨年は自民党国防部会長という大任を果たさせていただき、また現在は、経済産業委員会理事、党総務・建設団体委員長などの役
職を賜り、精一杯働かせていただいております。私が国政の場で活動させていただいているのも、全て皆様のご理解とご支援の賜です。地域の皆様のお声を国政
へ届けられるようこれからも懸命に走り続けて参りますので、どうぞ本年もよろしくご指導賜りますようお願い申し上げます。

 
昨年は初の戦後生まれとなる安倍総理が誕生し、新しい国づくりが着々と進められております。憲法や教育、安全保障など国の根幹に関わる様々な改革が加速し
て参ります。私もチーム安倍の一員として、総理の提唱する「美しい国」を実現させるとともに、皆様の想いを国の政策に反映させつつ、次代を斬り拓く覚悟を
もって取り組んで参ります。
 構造改革と国民の自助努力により改革の成果が現われ始め、未来への明るい展望が開けてきました。改革の炎を燃やし続けながら、経済成長を維持しつつ、国や地方の無駄を省き、歳出歳入改革に取り組むことで、簡素で効率的な政府の実現を目指して参ります。

 安倍総理の下、昨年の臨時国会では、改正教育基本法、防衛庁の省昇格、そして地方分権改革推進法など多くの重要法案が成立しました。ご理解とご支持を下さった国民の皆様に感謝いたします。
 国家とは、領土とそこに住む人間と人々の日々の営みでなりたっています。その営みの集積が、その国特有の文化、社会規範、伝統を創り出します。日本人は
勤勉で規律正しいと言われてきました。他人に迷惑をかけるような恥ずかしいことはしない、困った人はみんなで助けていくという恥と共生の文化などの伝統的
規範を大切にしてきた国民でした。

 戦後、日本の教育は、豊かな経済社会や安心な生活を実現する原動力となるなど、多くの成果をあげました。しかし、現在の社会の状況を見ると、これまでの
教育が時代に適応し切れていない面も多くあらわれています。教育の憲法ともいうべき教育基本法が59年ぶりに改正されました。戦後教育は、自律の精神や公
共の精神、自分が生まれ育った地域や伝統に対する愛情といった日本本来の価値観をともすれば置き去りにしてしまいました。まずはこうした価値観を、私たち
大人が子どもたちに伝え、教えていかなければなりません。戦後60年を経て、祖父母と同居する家族が減り、兄弟姉妹の数も減り、地域のふれあいも減る中
で、こうした家庭や地域の大きな変化・教育力の低下を踏まえた、腰を据えた社会ぐるみの教育改革が必要だと思います。

 地方の活力なくして国の活力はありません。私も地元の皆様とお話しすると、「景気がよくなっていると国は言うけれども、私たちにその実感はない」という
声をよく耳にします。私もそのとおりだと思います。この景気回復をいかに実感できるものにしていくかが大変重要だと思っております。
 我が国の99.7%は中小企業です。企業の数としては430万社。そこに雇用されている人たちは全体の7割を占めています。まさに中小企業の活性化こそ
が日本経済の発展のカギになるわけです。日本経済は中小企業で支えられています。皆様方一人一人の声を真摯に受け止め、景気回復を全ての方々が確実に実感
できるものとするべく努力してまいります。未来に夢や希望を持てる日本にしていくために、また、社会保障制度を持続可能なものにするために、基盤を強化を
していくためにも、経済の成長は不可欠であります。成長戦略を着実に進め、景気回復を家計にも広げていく年にしていかなければならないと考えています。

 今年は、現在の憲法が施行されてから60年です。自民党の草案は既にできており、新しい時代にふさわしい憲法をつくっていくという意思を、今こそ明確に
していかなければならないと思います。まずは日本国憲法の改正手続に関する国民投票法案について、与野党間で議論を深め、今年の通常国会での成立を目指し
て参ります。
 日本をめぐる安全保障の環境は大きく変化をいたしました。大量破壊兵器やミサイルの拡散、テロとの闘い、地域紛争の続発、こうした中において日本の平和
と独立と自由と民主主義を守り、そして日本人の命を守るために、我が国の安全保障体制を一層強化していく必要があります。また、国際社会での我が国の平和
貢献をさらに進めるための法的基盤を再構築する必要があると考えております。集団的自衛権の問題も含め、憲法との関係の整理について個別具体的な類型に即
して研究を進めてまいります。

 この春には、私たちの街の未来を決める統一地方選挙が実施されます。また夏には参議院選挙もあります。自民党は、広く皆様の声に耳をかたむける体制を整
えなければなりません。政治への参加意識を高め、みんなで地域のことや国のことを考える。そうした民主国家の理念こそが今の自民党の根底にあると感じてい
ます。机上の議論だけでなく、実際にどういうことが必要なのか、皆様が何に困っているのか、苦しんでいるのか、いろいろな人の話を聞いていくことが、本当
に求められている施策につながっていくものだと思います。
 私は街の隅々の声をよく聞き、何よりも自分自身を足元から常に見つめ、私に何ができるか、何をやらなければならないかを考え、皆様からいただいた自らの役を果たせるよう今年も全力で取り組んで参ります。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

新 藤 義 孝

第123号 「美しく生きる」


 映画「硫黄島からの手紙」の公開により、硫黄島のことや、私の祖父栗林忠道のことが話題となっています。この度「歴史街道」という月刊誌が硫黄島と栗林忠道のことを特集しました。その中で、漫画家の黒鉄ヒロシさんが素晴らしいエッセイを寄せてくれました。
「硫黄島の骨    黒鉄ヒロシ
 選択の余地のない状況に置かれた時、ヒトとしての真価が問われる。
 硫黄島総指揮官に任命された陸軍中将・栗林忠道はいろんな角度からその問いに答えた。
 言語を獲得した古今東西の人類が、不条理と感じて格闘し続ける生と死の問題に対して、行動で示した。
 答案は様々な書体で綴られる。軍人としては楷書、家庭人としては行書、文人としては草書。まとめてのヒトとしての書体は透明のインクで記されたから、読み取る側の主観によってカタチが決まる。
 今を生きる我々は生者にも学ぶであろうが、質と量の点で死者を向く機会の方が多い。
 栗林を含めて、先人達の説くところは「美しく生きる」の一点に集約されるようだ。
 問題はその基準と査定であるが、美しく生きさえすれば、結果として死も同様の景色に吸い込まれる。その際には、背景としての戦争だの軍人だのは皮として、別れや涙はストーリーの筋肉と昇華して、骨だけが遺る。
 栗林忠道の骨は、美しいと思う」

(PHP研究所「歴史街道」1月号より)

 この「美しく生きる」という言葉に、私は深く感銘を受けました。人間が生きていく上で最も重要な価値観ではないかと感じています。今年の6月、私は仲間
の議員とともに台湾を訪問する機会がありました。陳水扁総統を始め政府要人と意見交換をさせていただきましたが、李登輝前総統と面談した際の会話が印象に
残っています。
 李前総統は、「こ
れからの時代、国家にとって最も必要なことはアイデンティフィケーション(アイデンティティの確立化)だ。変革する世界でそれぞれの国が向かうべき方向を
明確にしなければならない。また、この混乱した価値観の世界の中で、人間は何のために生きるのか、答えを探し続けていくことが重要だ。 Who am
I ? I am the I. この哲学的文章をどう解釈していくべきかをずっと考えている」
と、83歳とは思えない情熱をみなぎらせてお話ししてくれました。
 国や個人のアイデンティティ=自己同一性の確認=の確立こそが人間の永遠のテーマであり、私達はそのために人生に悩み、苦しみ、色々な経験をしながら答えを見つける作業を繰り返しているのだと思います。
「国家の品格」という本がベストセラーになり、新渡戸稲造の書いた「武士道」が根強い人気を得、また「硫黄島の戦い」が注目を浴びているのも、この心が乱れ人々が自分の人生や国の将来に明るい希望が見いだせない時代に、生きる知恵を示してくれているからなのでしょう。
 硫黄島の戦いでは、「人は大切なものを守るためにはどんなに苦しくても頑張ることができる。逃げず、へこたれず、踏みとどまることが人間の価値となる」ということが示されました。
 現代の我々は、先人達の労苦と努力を決して風化させてはなりません。戦争という極限の状態で日本人が苦しみ、不安と戦いながら、かくも美しく生きたことに敬意を払い、自分たちの道標としたいものです。


◆ 川口市民の皆様へ ~ 乳幼児医療費の窓口払いが廃止に

 
私は本市における乳幼児医療費の窓口払いの廃止を訴えてきました。週刊新藤44号で取り上げましたが、川口市の場合、6歳までの子どもの医療費は埼玉県と
市で負担しており、実質無料化されています。しかし現在の制度は、利用者が医療機関の窓口で一旦支払いを行い、後日申請書を提出して払い戻しを受けるとい
う手間がかかっています。この手続きのわずらわしさに不満の声が上がっており、しかも東京都やさいたま市ではすでに窓口払いは撤廃されているのです。
 この事業主体は市であることから、私は制度の改善について、仲間である自民党川口市議団に協力を求め、来春の統一地方選挙に向けた自民党川口支部のマニフェスト「KAWAGUCHI 改革プログラム」にも取り上げております。
 この度の川口市議会12月定例会において、自民党 岩澤勝徳議員、公明党 大関修克議員が質問を行い、市として来年4月診療分より、市内の医療機関での窓口払いを廃止する方向で準備している旨の答弁を引き出しました。乳幼児医療費(6歳まで)、ひとり親家庭等医療費、重度心身障害者医療費について、現金の支払いがなく診療が受けられるようになり、保護者の経済的・精神的負担が大幅に軽減されるのではと大いに期待しています。
 この制度改善に私が取り組むきっかけは、小さな子どもを持つある若いお母さんからの訴えでした。物事には必ず始めの一歩、最初の一声があります。今回は
一人の母親の意見が、議員を通じて議会や行政に届けられ、まち全体のルール改正に繋がる結果をもたらしました。政治をやらせていただいて本当に嬉しさを感
じる出来事です。これからも暮らしの改善に向け、始めの一歩を踏み出せるよう努力して参ります。

新 藤 義 孝


第122号 映画「硫黄島からの手紙」公開に寄せて



◆おじいさんに会えた

 クリント・イーストウッド監督の映画「硫黄島からの手紙」が、いよいよ今月9日から一般公開されました。これに先立って私たち遺族・関係者は試写会に招待されました。どんな映画になっているのか、期待と心配が入り混じったなんとも言えない想いで映画を観させていただきました。
 映画が終わりしばらくの間、私は言葉を出すことが出来ませんでした。自分が生まれる前に亡くなったおじいさんに初めて逢えた、という懐かしい想いと、戦争はなんとむごく悲しいものであるかということを改めて思い知らされ、あふれ出る涙を抑えることができませんでした。
 驚いたことに映画の最後にエンドロールが流れると観客の中から拍手が起こり、会場いっぱいに拡がっていきました。私は映画のスクリーンに向かって拍手が
起きたことを今まで見たことがありません。61年前に日本人が本当にがんばってくれた、私たち家族を守るために必死に役目を果たそうとしてくれた、その人
間の生き様に会場のすべての人が同じ気持ちで手を叩いてくれたのではないかと感じました。

 この映画は監督や俳優、制作の皆さんが魂をこめてつくったくれた映画だと私は思っています。昨年4月に会談した際に、イーストウッド監督は「戦争は若者の未来を奪うむごい愚かなことだ。しかし家族や大切なものを守るために犠牲となった人たちのことを我々は尊敬し、絶対に忘れてはならない。そのことを世界中の人に知らせたい」と語ってくれました。
 私の祖父、栗林忠道役の渡辺 謙さんも、撮影期間中ずっと、私がお渡しした栗林が家族に宛てた手紙の原文を毎晩読んで撮影に臨んだと教えてくれました。渡辺
謙さんは、撮影前と撮影終了時、そして映画の完成報告にと三度も長野県松代の明徳寺にある栗林の墓に参じて下さいました。その役にかける意気込みと真摯な姿に私も心を打たれ、僭越ながら私の知る限りの栗林の情報をお伝えしたつもりです。


◆ 映画「硫黄島からの手紙」

 この映画は、硫黄島戦を日米双方の視点から描く2部作の「父親たちの星条旗」に続く第2弾であり、アメリカを最も苦しめた指揮官として知られる栗林忠道中将が、妻の義井や娘である私の母たか子に宛てた手紙を元にした作品です。
 日本にとって本土防衛の最後の砦として、死を覚悟しながらも一日でも長く硫黄島を守り、ひいては本土決戦を防ぐために戦い続けた栗林を始めとする兵士たちの悲壮な姿が描かれています。
 
栗林は若い頃にアメリカに留学し、圧倒的な国力差から戦争には賛成していませんでした。しかし、軍部は開戦派が力を持ち、栗林は冷遇され、戦況が悪化の一
途をたどる昭和19年6月、硫黄島へ司令官として着任したのです。そして栗林は、それまでの日本軍の戦い方を180度転換させ、この島を長く持ちこたえる
ことが本土空襲を食い止め、国を守り、残してきた家族を守ることだといって、島中にトンネルを掘ってゲリラ戦法で戦い抜きました。
 戦場では徹底したリアリストだった栗林は、一方で人間味溢れる手紙を家族に送っています。
 映画の冒頭でも、上官の理不尽な体罰に苦しめられていた若い兵士を栗林が救うシーンがあります。合理的思考とヒューマニズムを併せ持ち、過酷な戦場において自分を見失なうことなく信念を貫いた姿を、私はこれまでも自分の内なる誇りとしてきました。
 2万余の硫黄島守備隊に対し、米軍はその7倍以上もの兵力を投入します。絶対に勝てるはずのない戦いに、兵士たちはどんな想いで立ち向かっていったのか。
 苦しくても逃げずに踏みとどまり、大切なものを守るために最後まで全力でがんばり続ける。硫黄島のシンボル的存在である摺鉢山が攻略され、いよいよ戦局が絶望的な状況となっても、栗林は兵士たちに自決を禁じ、苦しくとも玉砕するなと指示します。
 61年前に、死ぬよりも苦しい生を生きた私たちの祖先の葛藤と生き様が、まざまざと映画に描かれています。


◆ 祖父・栗林忠道の想い

 映画にもありますが、昭和20年3月17日いよいよ最後の攻撃を行うにあたり栗林は訓辞を述べます。
 「いま日本は戦いに敗れたといえども、日本国民は諸君の勲功をたたえ、諸君の霊に対し涙して、黙祷を捧げる日がいつかは来るであろう。安んじて国に殉じよう。予は常に諸子の先頭に在り」
 そして、還らぬ人となりました。今、硫黄島は61年間時間の止まった島です。南海の青い海と空、緑に囲まれた楽園のような風景のなかに、戦死した約2万
1千人の方のうち遺骨収集が終わっているのは約8千人強のみであり、実に6割の遺骨がまだ残されたままです。東京都小笠原村の小さな島で、いまだ故郷に還
れぬ英霊が眠り続けているのです。私はこれまで硫黄島協会の皆さんと共に遺骨収集と慰霊事業を続けて参りました。ご遺骨が一人残らず家族のもとに還れるま
で硫黄島の戦いは終わっていないのです。
 遺骨収集を完了し、この島を多くの人が訪れる慰霊の島にすること。それが私のライフワークです。そして、このような壮絶な苦しい戦いがあって、今の平和
があるということを、私たちは次の世代に伝えていかなければなりません。過去の戦争に蓋をせず、しっかりと事実を受け止め、二度と悲惨な戦争を行わないと
いうことが、貴い犠牲となった英霊に報いることだと思っています。

新 藤 義 孝

第121号 平成19年度税制改正に向けて ~活力に満ちた日本経済をつくるために~



 
今年もまた税制論議の季節がやってきました。グローバル化が進み企業が国を選ぶ時代にあって、あらゆる経済活動にとって、より魅力ある税制を構築すること
は国家的な課題です。また活力に満ちた日本経済をつくるためには、我が国の全企業数の99.7%、付加価値額(製造業)の5割、従業者数では7割以上を占
めている全国430万の中小企業が元気になることが不可欠です。
 中小企業の街、川口・鳩ヶ谷選出の議員として、私は自民党税調の企業税制プロジェクトチームの一員としてこれまでも活動してきました。
 平成19年度税制改正では、①減価償却制度の抜本的見直し、②法人実効税率、③事業承継税制の見直し、④留保金課税の撤廃の4点が大きな焦点になります。


◆ ①減価償却制度の抜本的見直し

 グローバル化・少子高齢化する日本の経済社会の中でも力強く成長していくために、国際的なイコールフッティングを確保し、イノベーションを加速化してい
く必要があります。そのため、昭和39年以来見直されていない時代遅れの制度を見直し、特に技術進歩が著しい分野で設備投資の促進に資する減価償却制度の
抜本的見直しをするべきです。
 日本の減価償却制度には、取得価額の100%償却ができないという問題、そして、償却にかかる年数が外国に比べ長い設備が多いという問題があります。日
本では、法定耐用年数が経過した時点で90%しか償却ができません。諸外国は、耐用年数が経過したところで100%償却ができるという制度になっているの
に対し、日本はその後何年経過しても最大でも95%までしか償却できません。これはもともと昭和39年に行った調査で、設備を使い終わって、それを売った
らどれぐらいの価値があるかを調べた時に、大体平均で売れば5%ぐらいの価値が残るということで決められたようですが、最近の調査では、ほとんど価値がな
く、むしろ廃棄費用のほうが沢山かかってしまうという現状があります。これでは日本の企業の設備更新にとって大きなハンディキャップになってしまっている
と言わざるを得ません。中小企業も技術の短サイクル化や設備のハイテク化に対応していかないと生き残れなくなっています。減価償却制度をこうした状況に合
わせて見直すことが、ものづくり中小企業の発展のためにも不可欠です。
 なお、見直しを行っても減価償却費の総額は同じであるから、中長期的には法人税は減税になりません。
 この減価償却制度の抜本的見直しは、小泉内閣の抜本改革で残された課題であり、何としても解決しなければなりません。


◆ ②法人実効税率の引き下げ

 現在の法人実効税率の国際比較を見ると、日本、アメリカ、ドイツが大体40%ぐらいで、その他の国は大体30%ぐらいになりつつあります。また、GDP
の負担率で見ても、日本は先進国の中では一番重くなっているというのが現状です。先般、ドイツでは、税率の低い中東欧に企業が流出したことに危機感を持
ち、30%弱に引き下げるという連立与党合意がなされました。
 現在の日本企業は、高い税率の中でまじめに税金を納めていますが、今後このような状況が本当に続いていくかどうか。最近5年間でさらに競争相手国の税率が下がっており、国際競争の中でイコールフッティングを確保していかなければ日本は生き残れないでしょう。


◆ ③事業承継税制の見直し

 株式会社になっている中小企業では基本的には承継するものは自社株しかありません。特に高収益の中小企業の株式は高く評価される傾向にあり、欧米に比し
て軽減措置も十分でないことから、親族内で事業を承継する場合に大きな障害になっています。自社株を保有している間は課税を猶予する、いわゆる農地並みの
事業承継税制を確立するべきです。
 この提案は、私が幹事長を務める鋳物産業振興議員連盟が口火を切ったもので、不肖私のオリジナルアイデアです。今回初めて経済産業部会として提案するこ
とができました。事業用資産にかかる相続税の軽減措置は、すでにイギリスやドイツなどで実施されており、我が国への導入を数年前より提案して参りました。
相続時の負担軽減により、若手経営者のやる気と希望をもたらすものとして強力に主張して参りたいと思います。


◆ ④留保金課税制度の撤廃

 中小企業の設備投資・研究開発等を行うための資金の確保や信用力向上等を図るために、利益の内部留保に対する課税の撤廃が大きな課題となっています。平
成18年度の税制改正において、平均並の配当を行えば課税されなくなる改正を実現したものの、配当を行っていない中小企業の多くは設備投資や財務体質改善
のために内部留保充実を図っており、現在の留保金課税制度はこうした未来ある中小企業の発展を阻害しています。今回は制度の全面撤廃を目指します。
 また、私のまわりの中小企業の皆さんから不満の出ている、特殊支配同族会社の役員給与の損金算入制限措置については、影響を見極めた上で、上限金額など必要な見直しを行うことを提案したいと思います。
 こうした税制措置により日本企業の体質を強化することは、経済の活性化、雇用の維持、税収の増加によって社会保障の原資を増やし、ひいては国民全体に利益をもたらすものであり、これら税制改正を実現に向けて取り組んで参りたいと存じます。

新 藤 義 孝

第120号 顕在化するいじめ問題を考える ~いじめをなくすためには~



 いじめを苦に子どもが自ら命を絶ってしまうという痛ましい事件が相次いでいます。いたいけな子どもが自らの手で己を殺める。そんな悲惨で悲しい出来事
は、本来決してあってはならないことです。かけがえのない命の灯をどうか消さないで欲しい。そうした犠牲者を出さないようにするにはどうすればよいのか。
どうしたらいじめはなくなるのか。子どもをお預かりしている現職の幼稚園長として、子育てに関わっている者として、何とか有効な手立てはないものか悲痛な
思いで頭を悩ませています。


◆ 顕在化するいじめ問題

 いじめは昭和50年代頃から大きな社会問題となり、いじめによる自殺が多発した年もありました。しかし近年、統計上はいじめは減少していると言われてき
ました。文部科学省の調査によると、昨年度の公立小中高校のいじめ発生件数は20,143件で、ピークであった平成7年(60,096件)に比しておよそ
3分の1に減ったことになっています。また、平成10年から昨年まで7年間連続でいじめによる自殺はないということになっていました。
 しかし現行の調査方法では、公立の小中学校が自殺などの件数を教育委員会に報告する際、その原因の記入欄が「いじめ」の他「学業不振」など15項目に分
かれており、昨年度は105件の原因のうち60%が「その他」となっていました。また都道府県によっていじめの報告件数に著しい差があるなど、自治体の判
断基準が異なっていることも問題です。
 国会でも様々な議論が飛び交っています。苦しんでいる子どものサインを見逃さないよう、どうしたら自殺を食い止められるか、その方策を懸命に話し合っています。


◆ この国の教育システム上の問題点

 教育委員会制度の改革を求める声があがっています。都道府県や市町村の教育委員会はいじめの実態を把握し、機敏に対応する必要があるにもかかわらず、ほ
とんど機能しなかったためです。教育委員会改革は教育基本法改正案の審議や、安倍総理直属の教育再生会議でも焦点のひとつとなっています。
 学習指導要領を定めているのは文部科学省で、公立学校の設置・運営をしているのは都道府県教育委員会ですが、実際に教育を行っているのは現場の学校長は
じめ教師です。国で決めたことはあくまで方針であって、その方針に沿った教育がなされるかどうかは教育の現場にゆだねられています。それが、隠蔽体質にも
繋がっているのです。その顕著な例が、最近世間を騒がせた高校の必修科目未履修問題です。学校長、教育委員会、文部科学省などの責任があいまいになってし
まい、そのしわ寄せが子どもたちに重い負担となってのしかかってしまいました。


◆ いじめを見過ごすクラスメートたち

 いじめ問題が表面化すると、マスコミ等は、悪いのは誰なのか犯人捜しを始めます。いじめた加害者、担任の先生、校長、そして子の親と責任が問われていきます。
 しかし私はそこに、重要な関係者を見落としているのではと感じずにはいられません。それはいじめがあったにもかかわらず、無関心を決め込んで見過ごした
クラスメートたちです。同じ教室内でいじめが行われていたら、クラス全体でその問題を考えていかなければなりません。しかし、自分は加担していないから関
係ないという理屈で、見て見ぬふりをしていた子たちこそが問題だと思います。これは、「個人の自由」のはき違えに他なりません。
 文部科学省の調査によれば、クラスのいじめに対して「できるだけ関わらないようにした」と答えた子が4~5割おり、傍観者的な態度をとる子どもが相当数
に上っていることがわかります。いじめに関わらないようにした子どもの考え方として、「他人のことにはあまり口出ししないほうがいい」と答えた割合が全体
と比較して高くなっています。


◆ いじめ問題から考える教育基本法

 現行の教育基本法は、昭和22年に戦後の教育の基本を確立するためにつくられた、いわば「教育の憲法」です。「個人の尊厳」の尊重などの教育の基本理念を規定するとともに、教育の機会均等や義務教育の無償などを規定し、戦後の教育の普及と水準の向上に寄与してきました。
 しかし一方で、個人の自由や個性が強調されるのに対し、規律や責任、他人との協調や社会への貢献など道徳心や公共心を育むことはともすれば軽んじられてきました。
 その結果が、子どもたちのいじめに対する無関心さをもたらしているのだとすれば、教育基本法の改正は喫緊の重要課題です。助け合いや相互扶助の精神を盛
り込み、個人の成長と合わせて規範と社会性を持った人間を育てていくことが大切です。そして、いじめ問題に関しては、クラスの子たちが自分たちで解決して
いけるよう指導していくべきです。


◆ 子どもの声を受け止める社会を

 この原稿を書いているときにも、いじめによる自殺予告とみられる手紙が政府に届いています。友だちや先生、親にも頼れず、一人で苦しんでいる子どもの悲
痛な叫びが聞こえてきます。人間は決して一人ではありません。自分を見ていてくれる誰かが必ずいるはずです。苦しみに追い込まれたとき、もう一度自分のま
わりを見まわして欲しいと思います。また、私たちも社会全体でその声を受け止めなければなりません。
 私はこの度、自民党の教育再生に関する特命委員会の幹事に就任いたしました。今を生きる子どもたちのために、教育改革は待ったなしです。子どもたちを見守る社会づくりに向けてこの問題に一層取り組んで参ります。

新 藤 義 孝

第119号 北朝鮮の軍事力と自衛隊の能力



◆ 北朝鮮の核実験

 10月9日午前11時50分、朝鮮中央通信は、北朝鮮で地下核実験が成功裏に行われたと報じました。地震波は観測されたものの、本当に成功したか否かは
今もってわかりませんが、北朝鮮が、国際社会からの批判を覚悟してまで、核兵器を保有しようしていることは間違いありません。私は、本年7月末、世界的に
著名な研究機関であり、「ミリタリーバランス」などを発刊している英国の国際戦略問題研究所を訪れましたが、同研究所のクローニン研究部長は、「北朝鮮は
既に11個の核を保有している」と明言していました。
 北朝鮮は、抑止力として保有すると主張していますが、万一使用しようとする場合、同胞の韓国への使用は想定し難く、中国、ロシアは友好国であり、米国は1万キロも離れており、冷静に分析すれば、わが日本が標的となる可能性が最も高いと考えられます。


◆ 北朝鮮の軍事的脅威

 北朝鮮の核の問題は、外交的な手段による解決を目指すべきものですが、最悪の事態を考え、それに備え抑止するのが国の責務でしょう。では、日本にとって、具体的に、北朝鮮の何が脅威なのでしょうか。
 北朝鮮は、日本を射程に収める弾道ミサイル「ノドン」を200基以上保有していると言われており、これに核が搭載されれば最大の脅威となります。しかし
ながら、核の小型化や絶妙なタイミングでの起爆は相当に高度の技術力が要求されます。一方で北朝鮮は10万人にも及ぶ大規模な特殊部隊も保有しています。
この部隊は軍関係と朝鮮労働党関係のものがあり、韓国向けの部隊が多いと言われていますが、工作船を用いて対日工作を担当している部隊もあると考えられて
います。さらに、炭疽菌やペストといった生物兵器についても、一定の生産基盤を有しているとみられ、化学兵器についてはサリンやソマン、マスタードといっ
た化学剤を生産できる複数の施設があり、相当量の化学剤を保有していると言われています。北朝鮮は化学兵器禁止条約にも加入していません。
 核、生物、化学兵器を総称して大量破壊兵器と呼びますが、これらは、ミサイルを使用せずとも、工作船や工作員・特殊部隊を用いて運搬・使用することがで
き、これは、軍事的にも合理的なオプションと言えます。このように、工作員や特殊部隊と大量破壊兵器が結びついた場合、我が国にとって、極めて大きな脅威
となります。


◆ 自衛隊の対応能力

 それでは、これらの脅威に対して自衛隊はどの程度の対処能力を持っているのでしょうか。弾道ミサイル対処については、週刊新藤第112号で紹介したとおり、その整備が急速に進められています。
 一方、隠密裏の行動や破壊工作といった特殊な訓練を受けている工作員や特殊部隊が潜入した場合、その最終的な撃破は、こちらも特殊部隊でないと互角に対
抗できません。このため、陸上自衛隊では、平成16年3月、対テロ、対ゲリラ、対特殊部隊を任務とする初の本格的な特殊部隊である「特殊作戦群」を新編し
ています。この部隊は、自衛隊の中から選抜に選抜を重ねた要員から成り、日々、厳しい訓練を行っていると聞きます。平素は、習志野に所在しており、事あれ
ば全国的に機動運用されます。
 また、万一大量破壊兵器が使用された場合には、先ず、何がどの程度使用されたか、完全防護の部隊が、検知・測定し、危険の度合いを分析する必要がありま
す。そして、汚染した地域での救援活動、助けた人達の除染なども必要となります。これらの任務を持つ部隊を、自衛隊では、化学防護部隊と呼んでおり、全国
15カ所に所在しています。この化学防護部隊は、近年、人員・装備の面でも優先的に強化されてきましたが、量的な強化だけではなく、より現実に近い訓練も
行っています。例えば、昨年は、地方自治体、警察や消防、他の自衛隊の部隊、さらに一般の市民も交え、大宮駅で化学テロが発生したことを想定した訓練が行
われました。今年は、11月27日に川口のキュポラにある行政センターで不審物があるという設定で地元警察、消防、陸上自衛隊第32連隊及び第101化学
防護隊が出動して実施される予定ですが、このような実践的な訓練は、危機に際して非常に効果的です。

 私は、先月、国防部会長としての最後の視察先として、化学防護部隊の中枢であり化学学校が所在する大宮を訪れました。部隊の皆さんは、高い士気のもとに
国民からの期待を担っているとの緊張感を持って高度な訓練をおこなっておりました。特殊作戦群や化学防護部隊など、普段、私たちが目にすることは殆どあり
ませんが、国の平和と国民の安全のために、特殊な技能を磨き、日々努力している自衛隊があります。

新 藤 義 孝

第118号 安倍内閣始動!- 第165回国会開会にあたり



◆ 新世代総理の誕生

 新世紀にふさわしい戦後最年少、初の戦後生まれの首相が、国民の大きな期待を伴って誕生しました。9月26日に開かれた第165回国会において、安倍晋三自民党新総裁は第90代内閣総理大臣に指名され、即日新内閣が組閣されました。
 前内閣からの再任は麻生外務大臣だけで、17閣僚のうち初入閣が11人に達し、新鮮さが感じられます。小泉内閣の人事と比べて、阿部首相は政策を一緒にやった人を次々と登用し、政策実行型の布陣はまさに「チーム安倍」といえます。
 小泉前首相は自民党抵抗勢力との対決を前面に出し、個人のカリスマで首相主導政治を推し進めてきました。一方、安倍首相は与党と一体となり、官邸のチームプレーで政治を進めていく意思が見受けられます。
 安倍新総裁の誕生にあたっては、私も20人いる推薦人の一人となりました。新世代の総理誕生に関わることができ、望外の喜びを感じています。
 そして9月29日には、衆参両院の本会議で、就任後初の所信表明演説が行われました。安倍首相は、自らの提唱する「美しい国」の姿について、文化・伝
統・自然・歴史を大切にする国、自由な社会を基本とし規律を知る凛とした国、未来へ向かって成長するエネルギーを持ち続ける国、政界に信頼され尊敬され愛
されるリーダーシップを持った国、であると説明しました。そしてその実現のためにたじろぐことなく改革の炎を燃やし続けると宣言しました。


◆ 自民党総務に就任

 党の役職として、私は今まで国防部会長を務めておりました。自民党には各省庁に対応した13の部会があり、部会で決議されたことは政務調査会の審議を経
て、自民党の最高意志決定機関である総務会に諮られます。そこを通過すると、閣議決定した上で政策として実行されるのです。私はこの度、31人いる総務会
のメンバーに任ぜられました。主なメンバーとしては、丹羽雄哉会長を筆頭に、総裁選に立候補した谷垣禎一前財務相、加藤紘一元幹事長、高村正彦元外相、福
田康夫元官房長官など、まさに最高機関にふさわしい蒼々たる顔ぶれがそろっています。


◆ 第165回国会への抱負

 今国会では、テロ対策特別措置法改正案、教育基本法改正案、憲法改正手続きを定める国民投票法案、道州制特区推進法案などの重要法案の成立が目されています。
 自民党国防部会長として取り組んで参りました私としても、長年の懸案だった防衛庁の省昇格関連法案はぜひ成立を期したいと思います。
 安倍首相は、戦後レジームからの脱却を主張し、自らの内閣で新憲法制定を政治日程に乗せることを明らかにしています。国の理念を形づくるのは憲法です。私も安倍首相の下で、悲願である新憲法制定に向けてさらに力を尽くして参ります。
 この臨時国会の会期は12月15日までの81日間です。新内閣の誕生早々には北朝鮮の核開発問題が起こるなど懸案は山積みです。私も表舞台には立ってお
りませんが、「チーム安倍」の一員としての自覚を持って、自らの信念に基づき、国の改革と暮らしの改善に向け全力で取り組んで参りたいと存じます。


新 藤 義 孝

あなたも参加してみませんか   私たちの街で全国初の試み-パーク&ライド実験


あなたも参加してみませんか
  私たちの街で全国初の試み-パーク&ライド実験


◆ 首都圏の渋滞を解消するために

 現在、首都圏では都市の発展に伴って人やものが大量に集まることで交通渋滞が多くの箇所で発生し、経済活動はもとより、自動車の排出ガスや騒音など生活環境にも大きな影響を及ぼしています。
 渋滞の解消には、抜本的には道路の拡幅という方法がありますが、住宅が密集しているところなど首都圏では大規模な工事が必要で膨大な時間と費用がかかってしまいます。
 そこで今、国土交通省では都市の渋滞対策としてひとつの実験を行っています。工事などを行わないソフト施策として、車から電車に乗り換えてもらうことで交通量を減らす、パーク&ライド実験が、私たちの街で埼玉高速鉄道線を使って全国で初めて行われます。


◆ パーク&ライドとは何か

 パーク&ライドとは、自動車の交通量を抑制する施策の一環で、自動車を駅周辺の駐車場に停めて(PARK)、電車やバスに乗り換えてもらう(RIDE)ことです。左のマークが目印で、駐車場の位置案内看板や空き情報看板などに表示されています。
 さらに、ホームページや携帯電話、カーナビなどによって、道路の混雑状況、都心までどのくらいかかるか、パーク&ライド駐車場の空き状態などの情報を得ることもでき、運転する人が道路の渋滞状況に応じてパーク&ライドを行うかどうか判断することも可能です。
 


◆ 122号の現況と埼玉高速鉄道の利用

 川口市、鳩ヶ谷市を横断する国道122号は交通量が1日5万台近くあり、渋滞が多く、ピーク時間帯の走行速度が15km/hと、通過するのに無駄な時間
がかかっている状態です。そこで今回、こうした都心に向かう交通を対象に、埼玉高速鉄道沿線の駅(浦和美園駅、戸塚安行駅、鳩ヶ谷駅、川口元郷駅)でパー
ク&ライドを実施するのです。
 4駅の駅周辺にある商業施設などの駐車場を実験専用の駐車場としますが、商業施設も平日には空きがあり、帰りには施設を利用していただくことも期待できます。
 また、実験に参加して下さる方は、埼玉高速鉄道を利用して赤羽岩淵以南まで行ったことを確認できて、アンケートに協力すれば、駐車場の料金が無料となり、地下鉄料金の補助も受けられます。


◆ パーク&ライドの効能

 車を利用するはずだった人が電車に乗ることによって、道路を走る車の台数は当然減ります。従って、渋滞が減り、車から排出されるCO2も減ることになり
ます。1台の車が直接目的地まで向かうよりも、排気ガスの無い電車や、多数の人が乗る事で省エネルギーになるバス等に乗り換えることで、環境にやさしいと
言えます。
 渋滞する場所に行く前に乗り換えるので、運転でイライラせずにすみ、鉄道や地下鉄で予定時間までに確実に早く着けます。目的地で空き駐車場を探しまわったり、都心や観光地の中心部の割高な駐車料金を払わなくて済むという利点もあります。
 皆さんの選択により、交通問題が少しでも解消されていくというわけです。


◆ あなたも実験に参加してみませんか

 現在、首都圏パーク&ライドホームページ(http://pr.s-park.jp/)では、モニターを募集しています。HPでは、道路・鉄道の所要時
間、駐車場の位置や満空情報などがリアルタイムに得られます。また、その日のパーク&ライドおすすめ度なども表示されます。
 ぜひ皆さんもHPにアクセスして詳細をご覧いただき、モニター登録をしてこの実験にご参加してみてはいかがでしょうか。


川口の子どもたち頑張る - 祝 川口リトルリーグ世界大会準優勝!

 埼玉県川口市をホームとする少年硬式野球チーム、川口リトルリーグ「レッドボーイズ」(日高 茂
監督)が、アメリカ・ペンシルバニア州で開催された「第60回リトルリーグ世界選手権大会」で世界第2位という快挙を成し遂げました。少年野球の世界一を
決めるこの大会で、国際グループの第1位になったレッドボーイズは、米国グループ第1位のジョージア州チームと決勝を戦い、接戦の末2-1で惜敗し準優勝
となりました。
 リトルリーグの世界大会は、県のブロック予選、全国各地区の連盟大会、全国大会を制し、アジア大会で優勝し、世界大会予選と長い戦いを勝ち抜いたチームが立つことのできる栄光の舞台です。
 今季のレッドボーイズの強さは際立っていて、レギュラーは全員中学1年生。小さい頃からずっと一緒に世界を目指してきた仲間たちです。今回の決勝戦まで、公式戦で50数連勝を重ねてきたとのことです。
 このチームのOBには元巨人軍投手で市立川口高校出身、現巨人投手コ-チの斉藤雅樹さんもいて、歴史ある強豪チ-ムです。
 こんなに素晴らしい子どもたちが川口にいたことを誇らしく思うとともに、川口の名を世界中に広めてくれた少年たちのことをぜひ皆様に知ってもらいたく、ご紹介させていただきます。
 おめでとう、レッドボーイズ!

新 藤 義 孝

自民党総裁選 – 安倍晋三さんに期待すること



◆ 9.11から1年を迎えて

 ちょうど1年前の9月11日は、私にとっても、自民党にとっても、そして日本の政治にとっても大きな転機をもたらした日です。私は1年8ヶ月続いた浪人生活から多くの皆様の暖かいご支援により国政に復帰させていただき、おかげ様で日々懸命に働かせていただいております。
 自民党には小泉チルドレンといわれる多くの新人議員が誕生し、引き替えに郵政民営化に反対し造反した政治家が党を離れていきました。この昨年の郵政選挙
の余波が未だなお続いた状態で、自民党総裁選挙が行われようとしています。今月1日には安倍晋三官房長官が出馬を正式表明し、すでに立候補を表明している
麻生太郎外務大臣、谷垣禎一財務大臣との3候補による戦いが確定しました。8日には告示がなされ、20日の投開票に向け政策論争が本格化していきます。
 自民党の総裁選は事実上、日本の総理大臣を決める選挙でもあり、今年最大の政治イベントと言えます。5年半に及んだ小泉政権を引き継ぐ次期首相には誰が
相応しいのか、そしてこれからのわが国の向かうべき方向と将来の展望について、どうぞ皆様もご一緒に考えていただきたいと思います。


◆ どういう総裁選を行うべきか

 
総裁選は誰を選ぶのかに加え、どのように選ぶのかが、とても重要です。数の力や密室談合で選ばれたリーダーではとても国民の信頼を得ることは出来ません。
私は国会議員になって以来一貫して、自民党を内部から変革すべく本当に微力ですが大きな志を持って行動して参りました。それは派閥によらない自由な総裁選
挙の実現です。派閥間の権力闘争を排し、政策中心の開かれたものにすることにより、党内の世代交代を促し、ポスト配分も年功序列から適材適所型に変えてい
くことができます。自民党旧来の悪習である派閥中心の総裁選挙の打破こそが私たち自民党若手議員の役割だと心に決めて参りました。
 小泉総裁が誕生した平成13年総裁選挙では、若手3人の仲間とともに自民党初となる有志による候補者別懇談会を主催し、橋本派反乱軍などと呼ばれましたが、その催しは現在の党青年局による候補者懇談会として総裁選に定着しています。


◆ 再チャレンジ推進議連のねらい

 私は、安倍晋三さんを支援する再チャレンジ推進議員連盟に参加しています。15人いる設立発起人の一人であり、現在は幹事を務めております。
 この派閥を超えた集まりは今でこそ130人を超える集団となっていますが、6月初めの設立時には派閥から圧力がかかったこともありました。発起人となっ
た15人はいずれもそうした圧力を受けながらも、覚悟を持って参加した同志であり、大半は平成15年の前回総裁選=小泉総理の最後の総裁選となった際に若
手の候補者を立てるべく総裁選立候補に必要な20人の推薦人集めを行った仲間たちです。(その時は19人まで集まりましたが、あと一人が足りず候補者を出
すことが出来なかったのです)
 今回の再チャレンジ議連の目的は政策をベースにした安倍晋三さんへの支援です。小泉構造改革は大きな成果を上げましたが、勝ち組・負け組といわれるよう
な格差を是正するために、多様な機会のある社会の仕組みを整えることが時代の要請だと思います。そして派閥横断の中堅若手議員によるこうした活動が、総裁
選の活性化と自民党の世代交代を促進し、新しい日本のリーダーを生み出すことこそが、この国に新しい希望と活力をもたらすと信じて活動しております。


◆自民党の総裁になるには・・・

 私が38歳で初当選した時、竹下登先生から「君も年齢的には総理の資格があるなあ」と笑いながら言われたことがあります。自民党では総理になるには30
年かかるといわれ、それだけ修行を積まないと出来ない厳しい職務であると共に、一つ一つの階段を上るがごとく時間がかかるのだと教えられました。したがっ
て30代で国会にいることが総理になる最低の条件だと、竹下先生は励ましのような慰めのような言葉を私にかけてくれたのです。
 そうした観点でみると今回の総裁選は自民党の政治を変える歴史的転換点になる可能性があります。
 現在優勢が伝えられる安倍晋三さんは当選5回で勤続13年。もし総裁に就任され、総理大臣に就かれたすると、これまでの記録を塗り替える短期間でのこととなります。また世代的にも初めて戦後生まれの総理が誕生するのです。
 そうした新しい総理・総裁に期待することは、これまでの政治的しがらみを取り払い、国家の骨組みを抜本的に見直し思い切った改革を実行することです。海
千山千の議員が跋扈する党内運営や野党との駆け引きなど、経験不足を問われないかと心配する向きもありますが、安倍さんは党の要である幹事長と内閣の要で
ある官房長官を経験し、総裁候補としての研鑽を積んでこられました。
 そしてどんなことでも大願成就の前には障害がつきものです。大切なことは、信念を持って、将来のビジョンを示すことです。故小渕総理が言われていたよう
に、政治家は背骨を持って、国を想う心を持ち続けていれば、様々な困難に立ち向かっていけるはずだと確信しています。
 そして私は、少しでもこの国が良い方向に前進できるよう、微力ではありますが多くの国を想う仲間とともに頑張って参りたいと思います。

新 藤 義 孝

第115号 日本の海を守れ



◆ 東シナ海のガス田

 私は先月、自民党の国防部会長として、自衛隊の那覇基地から海上自衛隊第5航空群の哨戒機P-3Cに搭乗し、東シナ海の中国のガス田を視察しました。日本周辺の海上に、巨大なクレーンのような天然ガスの採掘施設があり、火を灯し実際に稼動中であることを確認しました。
 中国の採掘施設は日中中間線のぎりぎり中国側にありますが、海底にある天然ガスは、日本の排他的経済水域に及んでいると考えられます。中国は、次々と採掘施設を建設し中国本土までパイプラインをひき、採掘した天然ガスを送っています。
 さらに、中国は、昨年9月、このガス田付近で、最新鋭のソブレメンヌイ級駆逐艦をはじめとする5隻の海軍艦艇を周回させるなど、国益を考え着々と既成事実を積み重ねています。


◆ 日本の海洋権益

 我が国は、原子力を含まずに計算した場合、そのエネルギー自給率はわずか4%に過ぎません(詳しくは「週間新藤」第106号で述べました)。一方で、日本を取り巻く海には、石油、天然ガス、ニッケル、コバルトといった海洋資源が多数存在しています。
 最近では、メタンハイドレードや海洋深層水のエネルギー利用など海洋資源は大変注目されています。エネルギーと天然資源は国家の生命線であり財産です。領土や領域は、海洋権益を確定する上でも、そして、私たちが安全で豊かに暮らすために、絶対に外せない大切な問題です。
 国際的には、領土問題や海洋権益の確保には、実効的な活動や事実の積み重ねが重要となります。東シナ海に目を転じれば、海洋資源の「宝の山」と言えるこの海域で、日本は未だ天然ガスなどの採掘を行うにいたっておらず、手をこまねいているわけにはいきません。
 政府も平成16年7月から海底資源のデータを収集するための調査を開始しました。
 また国会では、今年5月、国際法にも則ったかたちで、海洋で採掘施設などを設置する場合に安全が図られるよう、私も賛成議員の一人となって、「海洋構築物等に係る安全水域の設定等に関する法律案」が議員提出されました。


◆ 日本周辺の海の状況

 日本周辺の海には、領土や海上権益を守る上で様々な懸念があります。日本は国土面積では世界で60番目の広さですが、排他的経済水域を含む海洋面積は世界第6位の海洋大国です。
 北の海には未だ北方領土問題があり、今般、日本漁船への銃撃事件があり犠牲者が出るなど緊迫した状況があります。ロシア太平洋艦隊には、今も核を搭載した原子力潜水艦が配備されており、その動向には日々注目する必要があります。
 日本海では、平成11年に能登半島沖で北朝鮮の不審船事案があり、今も海上で、工作船を用いた不法取引が行われている可能性も否定できません。また、先月、北朝鮮が弾道ミサイルを撃ったのもこの日本海です。さらに、北朝鮮の問題だけではなく、竹島の問題もあります。
 東シナ海では、尖閣諸島の問題に加え、近年、中国が活発な活動を行っています。中国の海洋調査は、かつては日中中間線付近が多かったのですが、最近で
は、太平洋側へと移行しています。これは、中間線付近の海洋調査はほぼ終わったことを意味し、中国が自国の潜水艦の活動などのため太平洋へと関心を持って
いることを示しています。
 16年11月には、先島諸島で中国潜水艦による領海侵犯も行われました。潜水艦が潜没したまま他国の領海に侵入するのは明らかな国際法違反です。また、
東シナ海上空での自衛隊機のスクランブルも急増しました。中国機と考えられる航空機へのスクランブルは、16年度は13回でしたが、翌17年度は107回
となっています。


◆ 日本の海を守れ

このような日本の海を、自衛隊は、日々、監視を行い守っています。正月もお盆も悪天候であろうと、必ず毎日、海上自衛隊の哨戒機P-3Cは、北方海域、日
本海、東シナ海の3海域を飛行し、不穏な動きがないか空から監視しています。日本の空も、24時間態勢で全国28カ所のレーダーサイトが目を光らせていま
す。いつどの地域でもスクランブルができるよう、航空自衛隊の戦闘機は即時緊急発進ができる状態で待機しています。自衛隊だけでなく、海上保安庁も、常に
尖閣諸島周辺に巡視船を配するなど領海の警備に当たっています。こうした、直接には見えにくい苦労の上に、日本の海域、領土、権益が守られています。
 私も、日本が将来、安全でより豊かな国であるよう、日本の海の守りと領土問題には、今後とも、こだわりを持って取り組んでいきたいと考えています。

新 藤 義 孝

第114号 イラクへ陸上自衛隊を派遣した成果について


◆ 陸上自衛隊の撤収

 およそ二年半にわたる任務を終了し、イラク南部サマワから陸上自衛隊の部隊が撤収しました。2004年1月に先遣隊がイラク入りして以来、約5,500
人の陸自隊員がイラク復興支援に携わりましたが、戦闘行為に巻き込まれることは一度もなく、一人のケガもなく、そして一発の弾も撃つことなく無事帰国しま
した。
 私はかつてイラク戦争の前後に外務大臣政務官を拝命し、イラク人道復興支援特別措置法の成立に奔走しましたが、今また自民党の国防部会長として、イラク
の問題を担当しております。その意味でも、今回のイラクからの撤収は私にとっても感慨深いものがあります。自衛隊をイラクの復興支援に派遣することについ
ては政治的には賛否両論ありましたが、今回は、イラクへ陸上自衛隊を派遣した成果と自衛隊の国際平和協力活動について、考えて参りたいと存じます。


◆ 陸上自衛隊の舞台の活動の成果

 陸上自衛隊は、現地ムサンナー県の人たちの自主的な復興に必要な最小限の基盤を整備するため、現地関係機関と十分調整し、また現地のニーズに最大限配慮
しながら、政府開発援助(ODA)による支援とも連携しつつ、約2年半にわたり、医療、給水、公共施設の修復・整備活動に取り組んできました。
 サダム・フセイン政権下では満足な行政サービスを受けられず、生活の全般にわたり不便を強いられていたムサンナー県において、これら陸上自衛隊の部隊に
よる活動はODAによる支援と相まって、現地の生活基盤の整備、厳しい雇用環境の緩和など、様々な側面で多くの成果を挙げてきました。
 具体的には、医療分野においては、診療・医療技術の指導や簡易診療所(PHC29箇所)の整備等により、サマーワ母子病院で非常に高かった新生児の死亡
率も支援前の約3分の1にまで改善されたほか、ムサンナー県で県民全員が基本的な医療サービスを受けることが可能となるなど医療事情が大きく改善されまし
た。
 公共施設の面では、県内約350校の学校のうち、約3分の1(陸上自衛隊約40校、ODA約70校)が整備され、イラクの未来を担う子供たちが、笑顔で学べるようになるなど、教育環境の改善に尽力しました。
 また、県内の生活道路を約130km(陸上自衛隊は約80km)を整備し、生活道路の交通遮断や渋滞の解消を図ることができました。
 水の分野においても、平成16年3月から17年2月まで、延べ約1,189万人分の給水活動を行ったほか、浄水場の整備などを行い、人々が生きていく上で必要不可欠な水事情の改善に大きく貢献してきました。
 更に、陸上自衛隊による活動の結果もあり、ムサンナー県の行政当局は、自らニーズを発掘し、事業を企画立案できるようになるなど、ムサンナー県行政当局の能力も着実に向上しました。


◆ 陸上自衛隊の活動に対する賞賛

 このような陸上自衛隊の活動は、現地住民、ムサンナー県当局、イラク政府から大変感謝され、高い信頼を獲得しております。また、6月の日米首脳会談にお
いて、ブッシュ大統領からイラクでの陸上自衛隊の活動が成功例のひとつとして賞賛を受けたように、国際社会からも高い評価を受けています。
 私が主宰する自民党の国防関係合同会議においても、イラクでの自衛隊の誠実な活動を評価する声が多くあがりました。


◆ 国際平和協力活動の本来任務化

 イラクでの自衛隊の活動は高い評価を得ていますが、自衛隊の国際平和協力活動は、自衛隊法の雑則などで規定されており、「自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度」で行う「付随的な任務」との位置づけです。
 私は、このような国際平和協力活動を自衛隊の「付随的な任務」から「本来任務」として位置づけ、積極的に推進するべきと考えています。
 今回のイラクでの活動を例とすれば、自衛隊の活動で最も利益を受けて喜んでいるのはイラク国民であり、今後、イラクが安定した民主政権となることによっ
て最も利益を受けるのは、イラクの周辺国であり、世界各国であり、日本です。そして、日本の発展と繁栄は、世界の平和と安定があってこそ、成し遂げられる
ものなのです。
 航空自衛隊は、陸自イラク撤収後の任務拡大により、7月31日にC130輸送機をバグダッドに初めて乗り入れさせ、人道支援物資等を輸送しました。
 今後の空自の活動は、多国籍軍、国連関連の輸送に移ります。イラク各地への任務は依然として危険なものであることに変わりはなく、全ての自衛隊員の任務が無事に完了するまで、私たちも気を緩めることはできません。


◆ 国際協力の体制整備を

 本年6月、防衛庁を「省」へ移行する法案が国会に提出され継続審議となりましたが、国際平和協力活動として行っている自衛隊の活動が本来任務化されるこ
とも法案の大きな柱となっています。これは、自衛隊がさらに効率的に日本の国益のために働き、そして世界の平和に貢献するために必要なものです。
 自衛隊の海外活動を国土防衛と並ぶ本来任務に格上げする、海外派遣に関する恒久法の整備について、次期国会でこの法案を成立させるよう、私も精一杯取り組んで参りたいと存じます。

新 藤 義 孝

第113号 わがまちの誇る技術力 ~機械工場の現場を視察して



◆ 日本有数の工業都市、川口

 日本有数の集積率を誇る中小企業の街、川口。その中核は何といっても製造業です。川口はものづくりの街として全国に名を馳せて参りました。本市は、事業所数の中で第二次産業が占める割合がかつて日本一だったこともあるのです。
 工業都市だった川口も、現在は宅地化、マンション化が急速に進み、その人口は50万人に達する勢いですが、住宅地に隣接する何の変哲もなく見える町工場に、世界でもトップクラスの技術が脈々と受け継がれています。
 今回は、全国でも最大級の206社が加盟する川口機械工業協同組合の河村理事長を始め幹部の皆さんに、加盟企業を案内してもらいました。


◆ ものづくりの現場にふれて

 
最初に訪れた会社は、IT機器の回路部品をつくる機械を製造している企業です。ここではかつてマレーシアの製品と競合していたそうで、価格は20%程割高
ですが、納期の早さ、少数でも対応できること、不良品率の低さなどから、今では海外製品を押しのけてメーカーからの安定受注を得るようになりました。
 製造ラインは、小学生の頃から工作機械いじりが趣味だったという根っからの機械屋の33歳の若専務が一手に引き受けており、従業員も20代・30代の若い人が半数以上を占める勢いのある会社です。
 次に訪問したのは、液晶テレビのパネル製造のための機械等をつくっている会社です。2mくらいのアルミのパネルにシャープペンシルの芯ほどの大きさの0.5mmのドリルで1万個~1万5千個の穴を開けます。その機械は、10ミクロン(1ミリの1/100です!)単位での精度を要求されています。
 主に韓国や中国からの受注が多いそうです。ひとつの製品を納品するまでに、市内の企業約30社に作業を分担してもらっているとのこと。
 次は、いわゆる金型屋さんです。
コンピュータのキーボードやテレビ・ビデオ等のリモコン操作ボタン、最近ではデジタルオーディオプレイヤーに使用されるボタン等のゴム製品の金型を設計制作しています。
 髪の毛よりも細い0.01mmのドリルで文字を刻むのはまさに特殊技術で、製品を加工するための刃物を自社でひとつひとつ丸棒から削ってつくっています。
 私が見たのは、分速6,000回転の直径2ミリのドリルを使い、製品を3/100ミリ削るという作業でした。
 この会社でも、当初メーカーが発注していたインドネシアでは必要な精度が得られなくて、仕事を任されるようになったのだそうです。
 最後に訪れたのは、機械を削るための超合金のドリルをつくっている会社でした。製造している工具は全て特別注文で1,000品目程もあり、日本でも数社しかないという、極めて特殊な技術を持ったところです。
 視察をしながら社長さんたちに話を聞くと、異口同音に唱えるのは、川口市内にいないと仕事にならないということでした。今回視察した会社はもとより、こ
の街は、例えば、鋳物で形をつくり、工作機械で加工し、磨き、穴をあけ、塗装し、そうした工具もこの街でつくり、ひとつの仕事を30から50の会社が共有
するネットワークが形づくられています。それが、私たちの街の製造業の特色なのです。


◆ 工場立地政策の整備を

 原材料から組み立てまであらゆる業種がそろっている地場産業の集積の街は、全国でも類を見ません。
 地方分権の流れの中では、街がそれぞれ独自の魅力と特徴を持つことが、都市間競争に打ち勝つ必須の条件です。商業の発展、福祉の充実、教育の高度化、様
々な要素が街の魅力には必要ですが、私たちの街は製造業で発展してきました。その歴史と現在の集積はかけがえのない街の財産です。
 現在、政府は経済成長戦略の大きな柱としてものづくりを据えており、国を挙げて製造業をバックアップする仕組みを整えようとしています。私も先の通常国会では、中小企業ものづくり基盤技術高度化法の成立に力を尽くしました。
 川口市の製造業の存続のために、現在の一番の課題は、この街に適した工場立地政策を打ち立てることです。人口が増え住宅が増えるとともに操業環境は年々
悪化しています。この街にも、技術力を持った力のある企業が次々に育っていますが、そうした企業が新たに工場を建てようとしたときに、例えば川口市が持っ
ている未利用地を都市型の工業団地として利用できるようにしてはと考えています。国県市の各議員や行政と連携をとり、わが街の活性化のために、私もぜひ働
きかけていきたいと思います。

新 藤 義 孝

第112号 弾道ミサイル防衛について


 北朝鮮は、7月5日早朝に6発、夕方に1発の弾道ミサイルを、日本海に向けて発射しました。事前の警告にもかかわらず発射を強行したことは、国際社会、
特に日米両国への挑戦的な行為であり、そもそも通報なしでの発射は国際法上も大きな問題があります。この弾道ミサイルが、日本海でなく、日本本土に飛来し
ていたらどうなっていたでしょうか。今回は、弾道ミサイルとその防衛について考えてみたいと思います。


◆ 弾道ミサイルの拡散

 弾道ミサイルとは、ナチスドイツが開発したV2ロケットがその原型と言われています。打ち上げ段階でロケット燃料が燃焼し、スピードと高度を得て、あとは高速で落下するだけの比較的単純な構造の兵器です。そのため、先進国でなくとも開発・配備が容易にできます。
 また、核・生物・化学兵器といった大量破壊兵器は、国際的に保有を禁止・制限する条約がありますが、弾道ミサイルには国際条約がなく、現在、世界で
47ヶ国が保有するに至っています。弾道ミサイルが脅威であるのは、弾頭に核兵器を搭載できる上、射程も長く、防御が極めて難しいことにあります。


◆ 北朝鮮の弾道ミサイル

 北朝鮮は、既に、韓国を射程に収める「スカッド」、日本を射程に収める「ノドン」を実戦配備しています。これらのミサイルは、地下の発射基地や専用のトレーラから発射できるため、その探知が極めて難しいと言われています。
 米国のある報告によれば、ノドンを既に約200発保有していると言われています。防衛庁によれば、今月発射されたミサイルは、6発がノドンかスカッドで
あり、残りの1発が、開発中の「テポドン2」と分析しています。テポドン2は、ハワイ、更に米本土を射程に収めようとするミサイルであり、米国にとって大
きな脅威となり得るものです。


◆ 開発の経緯 ― 91年の湾岸戦争

 弾道ミサイルの出現は第二次大戦末期ですが、米国で、ペトリオットPAC-3、イージス艦搭載の迎撃ミサイルSM-3といった、本格的な迎撃手段が開発され、配備が始まったのは、実は2004年とつい最近のことです。
 1991年の湾岸戦争では、イラクがイスラエルなどにスカッドを発射し、米軍のペトリオットPAC-2が迎撃しました。当時は、迎撃に成功したと言われ
ましたが、現在はその効果は極めて低かったと評価されています。PAC-2は本来、航空機を撃墜するための迎撃ミサイルです。目標に直撃するのではなく、
目標に接近した段階で自爆しその破片で航空機を撃墜する構造です。マリアナ沖海戦で米海軍が使用したVT信管と同じ発想です。
 このため、スカッドの弾頭搭載部分は破壊できなかったり、1発のスカッドを迎撃するために、PAC-2弾を7~8発も発射し、それでも効果は少なかった
と言われています。また、PAC-2では、スカッドより数倍高速のノドン(F-15戦闘機の約4倍の速さで落下)には、殆ど対応できません。


◆ 弾道ミサイル防衛システムの開発

 その後、米国では、湾岸戦争の教訓も得て、ITによる先端技術やレーダ技術の格段の進化を背景に、ノドン級の弾道ミサイルを迎撃できる手段として、
PAC-3とSM-3の開発にこぎつけました。PAC-3は地上の発射機から放たれ高度十数kmで、SM-3は海上のイージス艦から放たれ高度百km以上
の宇宙空間で、弾道ミサイルに直撃し破壊します。これは、ピストルで撃たれた弾をピストルで撃ち落とすような方式ですが、極めて高度な誘導技術とレーダ探
知技術が必要となります。
 米国では、レーガン政権下でのSDI構想以来の約20年にわたる長い年月と、10兆円を超える膨大な経費を投入して、V2出現後約60年を経て、ようやく有効な防御手段を獲得するに至った訳です。


◆ 自衛隊の能力

 日本では、2003年12月に、PAC-3とSM-3双方から成る弾道ミサイル防衛システムの導入を決定しました。PAC-3は今年度末から、SM-3
は来年度から実戦配備が始まる予定です。この配備を睨み、昨年7月には自衛隊法を改正し確実に運用できる法整備も行われました。
 防御能力が全くない現状から、有効な防御手段を持つというのは、わが国の防衛上大変大きな意義があります。防御能力の保持は、抑止の観点からも極めて有
効です。今後、200発のノドンに、そして質量ともに向上する可能性のある弾道ミサイルに有効に対処するためには、外交的手段だけではなく、弾道ミサイル
防衛システムの早急な整備と更なる能力向上、米国との連携も必要となるでしょう。


◆ 沖縄を訪問して

私はこの度、沖縄に国防関係の視察に訪れました。その際、沖縄所在の陸海空自衛隊の各司令・団長に、北朝鮮のミサイルが飛んできたらどうなるのかと尋ねた
ところ、「現在、有効に迎撃する手段はない。しかし、万々一に備え、できる限りのことは行っている」と緊張感の中にも悲痛な思いを感じる答えが返ってきま
した。その後、PAC-2の部隊も視察しましたが、将来のPAC-3の配備に向けきびきびとした士気の高い隊員を見て、勇気づけられる思いでした。
 日本の防衛にとって、今、最も重要な課題のひとつがミサイル防衛でしょう。私も、自民党国防部会長として、国民の皆さんの生命・財産を守っていくため、今後とも、この問題に最大限努力していきたいと考えています。

新 藤 義 孝

第111号 生活習慣病の予防のために ~国保ヘルスアップ事業について~



◆ メタボリックシンドロームとは?

 最近話題になっている言葉に、メタボリックシンドロームというのがあります。日本人の三大死因はがん、心臓病、脳卒中ですが、心臓病と脳卒中を合わせた
循環器病を引き起こす原因は動脈硬化です。最近の研究では、肥満(特に内臓のまわりに付着した脂肪)が様々な生活習慣病を引き起こし、動脈硬化をより引き
起こしやすいことがわかってきました。肥満症や高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病は、それぞれが独立した別の病気ではなく、内臓脂肪型肥満が主な
原因であることが指摘されています。
 このように内臓脂肪型肥満により様々な病気が引き起こされやすくなった状態をメタボリックシンドロームといい、治療の対象として考えられています。ウエスト周囲径(へそまわり)が男性で85cm、女性で90cm以上は「要注意」だそうです。さて、あなたは大丈夫ですか?


◆ 生活習慣病予防対策が急務

 医療制度改革関連法が先の国会で成立しました。この法律の骨子のひとつに生活習慣病対策があります。
 この法律がスタートする平成20年4月からは、市が運営する国民健康保険、サラリーマンなどが加入する健康保険、公務員の共済組合など全ての医療保険者に40歳以上の人たちの健康診断や生活習慣病対策が義務づけられます。
 衆議院での国会審議にあたり、厚生労働省の担当者に生活習慣病について説明を求めたところ、総死亡に占める生活習慣病による死亡の割合は6割を越え、一般診療費中に占める生活習慣病の割合は3割を越えていることがわかりました。

 生活習慣病の恐ろしい点は、長期間にわたって無自覚のまま病気が進行していくことです。少々血圧が高かったり、太っていてもあまり気にしないでいるうち
に、ある日突然、脳卒中や心筋梗塞の発作が起こり倒れてしまうというケースもあります。代表的な生活習慣病は、糖尿病、高血圧、高脂血症ですが、これらの
病気は、そのまま放置しておくと生命に関わる重大な病気につながる危険性があります。
 生活習慣病は日々の暮らしがその発症や進行に大きく関与しています。したがって、食生活や運動など毎日のライフスタイルを見直すことによって予防ができるのです。
 糖尿病や高血圧症などの生活習慣病は予防可能な病気であり、この医療費を削減し国民の健康寿命の延伸を図ることが医療制度改革関連法の大きな目的のひとつです。


◆ 国保ヘルスアップ事業とは

 政府は平成17年度から、市町村の国民健康保険に「国保ヘルスアップ事業」を推進しています。
 この事業は生活習慣病の一次予防を中心に位置づけ、個々の被保険者の自主的な健康増進や疾病予防を図り、ひいては将来的な医療費の伸びの抑制を図るための事業です。
 市町村の担当者が住民のために国保ヘルスアップ事業を実施・企画するにあたっては、厚生労働省が公表している「個別健康支援プログラム実施マニュアル」
があります。全国33カ所の市町村でモデルを指定し、効果的だった保健事業を集約し、その事例やプログラムの企画方法などを紹介したものです。33カ所の
モデルには埼玉県からは草加市が選ばれています。
 このマニュアルにそってヘルスアップ事業を実施すれば、住民の健康度がアップし、医療費も下がり市町村の財政状態も楽になるはずです。
 この事業には、3,500万円を上限とするという国からの助成金があります。100%の補助なので、事業を行う市町村の負担はありません。


◆ 川口市・鳩ヶ谷市での実施を

 今年度(平成18年度)国保ヘルスアップ事業に取り組む自治体は、全国1,820の自治体のうち340自治体にのぼっています。
 埼玉県からは6市町が申請しています。私はこの制度を皆様に広く知っていただき、ぜひ川口市、鳩ヶ谷市にも実施を働きかけていきたいと思っています。メ
タボリックシンドロームが引き起こす様々な病気は何よりも予防が大切であり、予防医療の充実は、皆様の生涯にわたる健康と、ふくらみ続ける医療費の抑制に
もつながるのです。
 国保ヘルスアップ事業をふくめ、地域の健康づくりは、行政だけではなく、地域の医師会等医療関係団体やスポーツジム、運動設備を持つ健康増進施設など様々な関係者が連携しなければ成り立ちません。
 住みよい健康なまちづくりに向けて、私も関係機関と連携を取りながら取り組んで参りたいと思います。

新 藤 義 孝

第110号 教育基本法の改正審議に想う ~私たちの国の未来のために~


 通常国会は6月18日に閉幕いたしました。小泉内閣の5年にわたる構造改革の総仕上げとして、様々な重要法案が審議されておりましたが、大方の予想に反
し国会の会期延長が行われなかったため、積み残しになってしまった大事な法案があります。今号では教育基本法の改正案審議について皆様にご報告したいと思
います。


◆ 今なぜ教育基本法の改正か

 現行の教育基本法は、昭和22年3月に、戦後の教育の基本を確立するためにつくられた、いわば「教育の憲法」です。「個人の尊厳」の尊重などの教育の基
本理念を規定するとともに、教育の機会均等や義務教育の無償などを規定し、戦後の教育の普及と水準の向上に寄与してきました。しかし、一度も改正されない
まま制定から既に60年近くが経過し、その見直しは時代の要請であり国家としての最重要課題です。今回私たち政府・与党が提出した改正案の内容はどのよう
なものなのか、そのポイントを2つ挙げてご紹介します。


① 豊かな人間性、社会性を備えた日本人の育成

 戦後の教育の中では、個人の自由や個性が強調されるのに対し、規律や責任、他人との協調や社会への貢献など道徳心や公共心、日本人としての意識を育てる
ことはややもすれば軽んじられてきました。これらは、かつて日本人であれば当然備えていたものでありますが、急速に失われてきています。したがって今回の
法案においては、現行法における「個人の尊厳」の尊重などの理念に加え、新たに「豊かな情操と道徳心」「公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画
し、その発展に寄与する態度」「生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度」「伝統と文化を尊重し、それらを育んできた我が国と郷土を愛する
とともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度」などを養うことを盛り込み、教育現場での取り組みを推進することとしたのです。


◆ ② 社会全体の教育力の強化

 現行の教育基本法は、学校教育、しかも義務教育、公立学校教育を中心に規定していますが、学校教育、社会教育、家庭教育を通じ、多様な分野にわたる社会
全体の教育力を高める必要があります。このような観点から、改正案においては、まず、「生涯学習の理念」を規定し、生涯にわたり、あらゆる場所、あらゆる
機会において学習できる社会の実現をめざすべきことを明らかにしています。また、新たに重要な分野として「家庭教育」、「幼児期の教育」、「大学」、「私
立学校」などについての規定を設けています。特に、「家庭教育」については、保護者が子の教育にとって第一義的責任を負うことを明らかにし、国や地方公共
団体が家庭教育を支援すべきことを規定しています。また、「学校、家庭、地域住民等の相互の連携協力」の必要についての規定も新たに盛り込んでいます。


◆ 戦後教育の盲点を正す

 政府・与党改正案のポイントをご説明しましたが、ここまでお読みいただいて皆さまはどんな感じをもたれましたか。「道徳心」「公共の精神」「国と郷土を
愛すること」「生涯学習」「私学教育」「家庭教育」等は新しい考え方なのでしょうか。私たちが日本人として当たり前に考え大切にしている概念が60年前の
法律には書き込まれていなかった、ということにお気づきになると思います。これらが法律に書かれていない、ということを理由に教育現場で意図的に教えられ
なかったことがあります。一方で、日教組などの一部は現行法にある「教育は支配を受けてはならず、直接行わなければならない」という条文の一部を引用解釈
し、それを根拠に文部科学省や教育委員会の指導を受けなくてもよいこととし、教育現場の最大の混乱をもたらしました。
 今回の教育基本法の全面改正は、こうしたこれまでの法律に書いてないから教えない・書かれているからやらない、という戦後教育のいわば盲点を改善し、望ましいわが国の教育のあり方を示すためのものだと私は考えています。


◆ 次期国会での成立を期して

 民主党の改正案について少し触れさせていただきます。基本的な内容に大きな差異はありません。ただ法律案の名称が「日本国教育基本法」となっており、わ
が国の法律で「日本国」とついているのは憲法だけです。これにはさすがに民主党議員の中からも何か他の意図があるのではないか、削除すべきだとの意見が出
ていました。
 焦点となった「愛国心」は、民主党案では前文のみに記述があります。肝心の法律の本文中には教育の理念についての条文そのものが無く、本文中に愛国心に
ついて触れられている部分は無いのです。法案審議の与野党交渉を行った国会対策委員会の仲間から聞いた話しですが、小沢党首は愛国心をめぐる民主党内の論
争の際、「この法案は成立させられるのか?出来ないのなら内容は自民党が最も困る内容にするべきだ。」とおっしゃったそうです。永田町に漂う政局の匂いが
して、私はとても気になりました。
 いずれにしても教育基本法改正案は次期国会に継続審議となっており、小泉総理の次の首相の下で成立を期すことになります。この国の宝である子供たちを
まっすぐに正しく育てるために、私たち国会議員は責任と自覚を持って政策論議を深め、必ず成立させなければならないと心に決めております。

新 藤 義 孝

第109号 ものづくりを支える中小企業の支援を



◆ 日本のものづくりを支える中小企業の実力

 日本の自動車メーカーが世界のトップに食い込んから久しくなりますが、その競争は熾烈を極めています。このため、自動車部品メーカーに対する要求も大変
厳しいものとなっています。安全性向上を図る一方、環境負荷を低減するための軽量化や作業効率向上のための複数部品の一体化など、技術的な難題が自動車部
品メーカーに突きつけられています。この課題に応えているのが、従業員規模でほんの数人から数十人の中小企業です。
 身近な製品でも中小企業の技術は光っています。例えば、携帯電話の電池ケース。プレス加工技術を用いて一枚の金属板を折り曲げ、小型・軽量でありながら
耐性の高い製品を中小企業が作り上げています。この他にも、鍛造、メッキなどものづくりの基盤となる技術に関して、日本の中小企業は卓越したレベルを実現
しています。その優れた技術が、自動車、携帯電話、液晶テレビ、半導体製造装置など、日本を代表する産業を支えています。また、燃料電池やロボット産業、
福祉機器や医療器具など、今後の成長産業の創出を担うのもこのような中小企業です。さらには、下請企業の地位に留まらず、自ら独自の製品を開発して市場を
切り開く逞しい企業も多く存在しています。


◆ 中小企業が抱える様々な経営課題

 他方、「ものづくり」に長けた中小企業にも、様々な経営上の課題があるのも事実です。一つ目は、人材の確保と育成です。我が国には、ニッチな分野で世界
のトップシェアを占めるような中小企業が沢山あります。しかし、その企業名が地域ですら知られていなかったり、採用活動に力を割けないために優秀な人材が
集まりません。また、採用しても、技術・技能の伝承には地道な教育が必要で簡単には進まないという苦労があります。
 二つ目は、資金の確保です。自社技術に絶対の自信を持ち、「この技術をさらに高めよう」、「独自の製品開発を展開しよう」など高い意欲を持っていても、
銀行の審査能力が不十分で、採算性のあるプロジェクトでも相手が中小企業であるがゆえに融資を躊躇するようなこともみられます。
 三つ目は、大企業との取引関係の構造的な変化です。企業間での競争が激しくなり、従来の固定的な系列関係や取引関係が崩れ、大企業が中小企業に求めてい
るものや、中小企業が目指すべき技術開発の方向性が分かりにくくなっています。そのため、「大企業が抱えている技術的課題さえ分かれば、自社の技術で解決
策を提案できるかも知れない」と考える中小企業の技術力が必ずしも上手く活かされていないのです。
 この他にも、発注元企業との間で不公正な取引慣行が存在したり、中小企業が長年積み重ねてきたノウハウが十分に保護されないなどの課題を指摘する声も聞こえています。


◆「ものづくり中小企業」が主役の時代

 先述したように、ものづくり中小企業は日本経済の基盤を担っています。急速な少子高齢化、国境を越えた競争、とりわけ中国を始めとするアジア諸国とのせ
めぎ合いといった経済環境の先行きを考えると、今後も日本のものづくり産業が、世界中で評価される優れた、便利な、そして環境負荷も少ない「メイド・イ
ン・ジャパン」の製品を提供し続けることが大事です。また、単なる経済活動の場としてだけではなく、従業員にやりがいや自己実現の場を提供し、地域社会の
活力の源泉となる重要な役割も担っています。
 私は、大きな変化が見込まれる「ものづくり中小企業」こそが新たな時代の主役であり、その支援に力を入れていくことが、今の政治に求められている大きな課題のひとつだと思います。


◆ ものづくり中小企業へのバックアップを

 こうした考え方に立って、この度の通常国会では、私が理事を務める経済産業委員会で審議の上、「中小企業ものづくり基盤技術の高度化に関する法律」が成
立しました。自民党内での法案立案作業の過程においても、私は、日本有数の中小企業の街・川口を代表する議員として、ものづくり中小企業の重要性を訴え、
多くの同僚議員の賛同を得て法案策定に力を尽くしました。
 優れた技術に裏付けられた製品は、人生を豊かにするものです。優れた製品は国境を越え、言葉を越え、世界の人々の心に響きます。そのものづくりを支える
中小企業には今後一層の飛躍が望まれているのです。日本という国のブランドイメージを形作り、国を豊かにし、地域に活力をもたらす力を持っている「ものづ
くり中小企業」の前向きな挑戦を、これからもしっかりとバックアップして行きたいと考えています。

新 藤 義 孝

第108号 汗を流して得た日韓交流 ~日韓国会議員サッカー大会に参加して~



 通常国会が16日事実上閉幕し、そして翌17日の午前8時、私は韓国に向けて発ちました。日韓の交流を深める国会議員親善サッカー大会に参加するためです。
 この大会も今回で7回目を迎えます。ワールドカップドイツ大会の日本は残念な結果に終わってしまいましたが、日本代表の健闘に賞賛を送ります。スポーツを通じた国際交流。規模や形は違えども、こちらも自ずと気合いが入ります。


◆ 日韓W杯共催の成功を経て

 羽田空港から2時間強。ソウルに着いたのは10時過ぎです。超党派ながら志を同じくした18名の議員とともに、バスで3時間揺られながら、全州(チョン
ジュ)にあるサッカースタジアムを目指します。全州はソウルから南に約230km。三国時代には百済の首都として栄え、また韓国料理としてお馴染みのビビ
ンバを生んだ、千年を超える歴史と食文化の街として知られている人口約60万の都市です。
 試合をするのは、2002年に日韓共催のワールドカップが行われた競技場です。当時、何としてもW杯を成功させようと願って日韓それぞれに議員連盟が発足し、以来、体を触れあい共に汗を流しての、会議に勝る親善外交を続けてきたのです。
 現在の日韓の政治情勢は、靖国問題や竹島問題でギクシャクしています。そんなモヤモヤを吹き飛ばすことができるのか。日本代表と同じブルーのユニフォームに身を包み、いざ、試合に突入です。


◆ さて試合の顛末は...

 この全州の競技場は収容規模4万席以上の大スタジアムです。しかし、ここに着いたのが午後3時50分。そして4時から開会式です。くたくたに疲れた中年
の国会議員の面々は、ろくに準備運動もできない状態で試合に臨む羽目になりました。前回の試合では私も張り切りすぎて左膝の靱帯を伸ばしてしまい、今回は
「とにかく皆ケガだけはしないように」と言っていたのですが、キックオフの笛が鳴った途端、そんな気持ちは一変して、気温30℃にもなるフィールドを駆け
回っていました。
 試合開始早々に日本がリードしたものの、韓国の反撃を受け結果は2対3で残念ながら敗れてしまいましたが、メンバー不足のためフル出場した私は、「守備賞」のトロフィーをいただきました。
 試合終了後にはお互いの健闘をたたえユニフォームを交換。スポーツを通じた交流は、現在の日韓情勢をみじんも感じさせず、笑顔と友情に満ちていました。


◆ 試合後には議員外交が

 試合が終わると本格的な議員外交の始まりです。夜の歓迎レセプションでは、すっかり仲良くなった両国議員が円卓に交互に座り、フランクに意見交換をいた
しました。翌朝7時からは駐韓日本国大使主催の朝食会、昼には韓国サッカー議連会長が昼食会を催してくれ、様々な情報交換が行われました。
 韓国側には現在の国会・国防委員長を務める議員もおり、北朝鮮を訪問した際のピョンヤンの様子や、日本や米国に対する北朝鮮側の考え方、更には、金正日総書記の動向等貴重な情報を得ることができました。


◆キム・ヨンサム元大統領との会談

 翌18日午後には、ソウル市内で議連会長の衛藤先生と共に、キム・ヨンサム元大統領と面談しました。
 今月12・13両日にわたって行われた、6年ぶりの日韓間の排他的経済水域(EEZ)境界画定交渉は、その議論がかみ合わないまま終了してしまいました。浮き彫りになったのは、竹島をめぐる対決の構図です。
 キム・ヨンサム元大統領は、1996年に当時の橋本首相との会談で竹島領有権問題をEEZ確定と分離する方針を決め、日韓の友好関係を深めていこうと提言した人物であり、私はその方針を打ち立てたことを現在も高く評価していると伝えました。
 今年4月に竹島周辺の海底地形調査をめぐって日韓の緊張が高まりをみせ、ノ・ムヒョン大統領は自身の支持率低下と国内の不満を国外に逸らすため、竹島問
題を焦点とする日本バッシングを始めました。今やその外交政策により国際社会でも韓国は孤立を深めつつあり、キム・ヨンサム元大統領もそのことを憂慮して
いるとお話しされておりました。
 私からは、日本の韓流ブーム、韓国のニッポンフィールを例に挙げ、日本と韓国の国民レベルでの相互理解と交流をより深めていくことを強く訴えました。

 僅か1泊2日の強行日程ではありましたが、得られたものは非常に大きかったと思います。こうした草の根の議員外交をこれからも続けていき、「日本と韓国が本当に近くて近い国になる」ための友好関係構築の一助としていきたいと思います。

新 藤 義 孝

第107号 防衛庁の省への移行について


日本を除く世界各国では、防衛に関する組織は全て「省」となっています。


 政府はこの度、防衛庁を「省」に昇格させる閣議決定を行いました。自民党国防部会長として取り組んで参りました私としても、わが国の長年の懸案の解決に
大きな一歩を踏み出すことが出来、感慨深いものがあります。今号では、防衛庁の省移行問題を考えて参りたいと思います。


◆ 省移行の経緯

 防衛庁の省移行の議論には、これまでに長い経緯があります。昭和29年に防衛庁が発足した時から庁でよいのかという論議があり、昭和39年の池田内閣の時には、省移行法案が閣議決定されたこともあります。ただ、当時の政治状況から国会提出には至りませんでした。
その後、平成9年の橋本内閣の下での行革会議では賛否両論が真っ二つに分かれ、「政治の場で議論すべき課題」と結論が先送りされることとなりました。平成
13年には、自民党、保守党などにより議員立法で法案が国会に提出されましたが、後の衆議院解散に伴い廃案となっています。平成14年には、「有事法制の
成立後において、防衛庁の「省」昇格を最優先課題として取り組む」と自民・公明・保守の三党で合意をし、有事法制後の与党間の約束となっていたのです。


◆ 内閣による初の法案提出

 自民党では、今までも防衛庁の省移行を強く推進してきました。昨夏の衆議院選挙でも、政権公約として選挙戦を戦い、今年1月の党大会でも採択していま
す。このような中、与党間では、私もメンバーとなっている「安全保障に関するプロジェクト・チーム」(山崎拓座長)を実に9回も開き、与党間調整を行って
きました。また国防部会では、内閣部会と合同で、二度にわたり今国会への法案提出を決定しました。今月6日には、自民党内の法案提出手続きである政調審議
会・総務会という2つの幹部会にて、不肖私から提案並びに説明を行い、了承を受けることができました。

 政府部内で完全に調整し終え、与党間でも正式に合意した内閣提出の法案を国会に提出するのは、防衛庁創設51年目にしてなし得た大きな前進です。ようや
く昭和39年の状況を越えることができました。この法案は秋の臨時国会への継続審査手続きを行い、重要法案として必ず成立させるべく自民・公明両党とも意
向は一致しています。


◆ 背景-近年の安全保障問題

 国の防衛、すなわち国民の生命と財産を守ることは国家の最も基本的な任務です。近年、世界では米国同時多発テロを始めとするテロの問題、核兵器や弾道ミサイルの拡散、イラク問題など安全保障を取り巻く環境は厳しいものとなっています。
 日本の周辺においても、拉致問題、核開発疑惑を抱え、さらに、大規模な特殊部隊や弾道ミサイルを保持する北朝鮮の存在、毎年国防予算を大幅に伸ばし海洋進出も著しい中国の存在があります。韓国にも、先日この週刊新藤でもご紹介した竹島の問題があります。
 防衛庁・自衛隊は、わが国の防衛に備え、多くの災害派遣を行いながら、在日米軍の再編問題にも取り組んでいます。また、今この時も、イラクの地で、インド洋で、ゴラン高原で、さらには地震災害の救援のためインドネシアでも、自衛隊の隊員たちは汗を流しています。


◆ なぜ省とするのか

 このような重要な組織を「庁」と位置づけたままで本当によいのでしょうか。「庁」とは、決められた事項を実施する組織であり、「省」とは、政策の企画立案を行う組織です。
 防衛庁は内閣府の外局に過ぎず、防衛庁長官は自衛隊を動かすため、あるいは防衛に関する法律を策定するため、閣議を求めることすらできません。また予算
要求や自衛隊の人事も内閣府を経ないと行えない仕組みとなっています。現在の「国の防衛」の主任の大臣は、内閣府の長としての内閣総理大臣であり、国の防
衛は、皇室、栄典、男女共同参画、金融、沖縄振興などと並ぶ内閣府の業務のひとつに過ぎません。
 このため、防衛庁をその仕事と役割に見合った組織にするのが、今後の日本の安全保障、そして国民の生命と身体の安全を確保する上でとても重要なことと考えています。


◆ 省とするメリット

 防衛庁を省とすれば、①わが国の防衛に対する姿勢を国内外に示すことができ、②国際的にスタンダードな組織となり、各国と対等に防衛協議などを行うことができ、③防衛大臣が閣議を直接求めることができるため、ミサイルや不審船といった緊急事態に迅速に対応することができるといった実質的なメリットがあります。
 一方、省にすると、中国や韓国など近隣の国々との関係に悪い影響を及ぼすのではないかと指摘されることがありますが、これはおかしな議論です。諸外国が
他国に脅威を感じるのは、その防衛力の質や量であって、国防組織の名称ではありません。また、世界各国で、国防組織を「庁(Agency)」と位置づけて
いる国はひとつもありません。諸外国との関係で、誤ったメッセージを送ることなく、真の信頼関係を築くためにも、諸外国と同等に「省
(Ministry)」とすることは必然と考えています。

 このように、防衛庁を省にするのは、単に看板を掛け替えるのではなく、とても重要な安全保障上の政策課題です。一日も早く省移行が実現するよう、今後もこの問題に取り組んでいきたいと考えています。

新 藤 義 孝