第 15号
2004.07.19
発 行

わが街のDNAA 市民に根付いた文化活動 「(リリア)」

「わが街のDNA」シリーズの2回目として、今号では第13号でお伝えした川口の文化の発信基地である「リリア」の知られざる運営システムと、「リリア」を支える市民の文化活動の一端をご紹介したいと思います。

「リリア」開館前の5年間、管理運営担当の任にあった私は、「公共の施設としては類例のない文化の殿堂を作る以上、『仏を造って、魂を入れず』ということが絶対にあってはならない」と、心中期する思いがありました。つまり、川口のより良き文化の構築に貢献し、またイメージアップを図るためには、よりクォリティの高い舞台芸術を市民に提供していかなければなりません。また、市民に大いに活用してもらうためには、リーズナブルな料金設定も必要不可欠な要素です。そのためには公共の非営利施設ではありますが、経営資本の基本である「人」、「もの」、「カネ」の確保と適切な運用システムの構築が急務であると考えたのです。

まず、「リリア」の運営を行う「文化振興財団」を設立することにしました。「人」に関しては川口市からの職員の出向と、民間から優秀な専門家を集めて組織を整えました。「もの=リリアの施設」に関しては、メインホール(2000人収容)は2階の張り出しを大きくするなど演劇重視の設計とし、音楽ホール(600人収容)はスピーカーを使わないアコースティックホールとし、中央にスイス製のパイプオルガン(1億3千万円!)を設置。徹底的に音質にこだわりました。

そして、「カネ」の部分では、市の公共施設として宿命ともいえる壁がありました。市民のための施設ですので、赤字覚悟の利用料でなければいけません。ですから利用が多ければ多いほど赤字となり、逆に利用が少なければ建設した意味もありませんし、維持・管理費だけが使われていくことになります。また、一流のアーティストや劇団等を招聘した場合でも、チケットを買い求めやすい価格にしなくては、一部の愛好家だけのものとなってしまうでしょう。つまり、稼働率を上げても下げても赤字であり、またハイクォリティーなイベントを行っても赤字という現実が待っていたのです。

そこで、私はあらゆる方策を考え、また可能性のあるものには体当たりでぶつかっていきました。その結果、私は「リリア」の事業を担っていく文化振興財団を支える3つの柱を構築しました。1つは財団法人の自主財源の確保です。誌面の都合で詳しくは述べられませんが、「公有財産法」や「地方自治法」の解釈をめぐって、直接、当時の大蔵省や自治省にかけあい、リリアという行政財産の使用にかかる特例を認めてもらいました。

2つ目は、「文化振興基金制度」を創設しました。「川口オートレース」の収益金の約3%を、毎年、「リリア」の文化振興財団が自由な裁量のもとで使用できるようにしました。現在はオートレース事業の縮小によりこの制度は使われておりませんが、開館初期の頃には、年間1億円以上の予算がリリアの文化事業のために充当されておりました。エジンバラ演劇祭の招致や海外アーティストの招聘など、大型イベントの財源としたのです。

3つ目は、ボランティアの存在です。志のある市民や企業に「リリアの成功が市の発展につながり、それが自分たちに有形、無形に還元される」という理念のもと、多くの方々にお声がけをしました。一人でも多くの方の参加があって街に文化が根づいていきます。「リリア」を基に川口のボランティアの花がひらきました。今月24日、25日に行われる「川口国際文化交流フェスティバル2004」は、まさに市民の手作りのイベントとして定着しました。

また、「リリアズパッションクラブ」があります。100名近くの民間企業の有志の方が集まって主催興行をし、またリリア主催の事業を支援してくれているのです。

このような努力の積み重ねによって、「リリア」は数ある日本全国の市営のホールや劇場の中でも、「自主財源率」がトップレベルにあり、市民の税金による負担は低水準を維持しつつ、市民にはより高い文化的な還元を保ちながら、今日に至っているのです。

最後に「リリア」の文化事業を支援する団体の一つである「川口四季倶楽部」をご紹介いたします。「川口四季倶楽部」は演劇を愛する市民が集まって、より質の高いミュージカルを1人でも多くの市民に提供したいとの願いで発足しました。「リリア」開館の翌年から、「川口四季倶楽部」は年2回(大人向け、子供向け各1回)の「劇団四季」の公演を主催し、今年で14年目を迎えています。とりわけ子供向けの公演では、3階席244席すべてを子供のために無料開放し、「川口のすべての小学生が卒業するまでの間に、一度は本物のミュージカルにふれてもらいたい」という目的のもと、毎年、教育委員会とタイアップして市内の小学生を招待しています。
今年7月27日(火)には、メインホールにて「桃次郎の冒険」が上演予定で、3階席は交通遺児の皆さんや市内の小・中学生に提供されることになっています。

『週刊新藤』の読者の皆さまも、お時間に余裕のある方は、ぜひお子さんと共に「リリア」に足を運んで頂ければと思っています。

文化の構築は大きな街の財産となり、豊かな精神生活を約束してくれます。物質文明は滅びても、精神的な文化は絶えることなく人々の心の中に受け継がれていきます。私は「リリア」を中心に、川口により良き文化が創造され、市民のひとり一人の心に常に発信され続けていくことを、心から念願してやみません。

新 藤 義 孝


新藤義孝プロフィール

 昭和33年川口生まれ。明治大学卒業。
 川口市役所で地方自治を経験し、市議を経て、
 平成8年38歳で衆議院議員に。当選2回。

 小泉内閣では総務大臣政務官(43歳)、
 続いて国会対策副委員長、
 外務大臣政務官(44歳)を歴任。
 昨年11月の総選挙で惜敗。次をめざす46歳。


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